やっぱりアイツはズルい男-2
鼻の奥の痛みを堪えながらあたしはなんとか口を開く。
「……でも、このままぶつかったってきっと無理よ」
「だよなあ、どうしよう。もうすぐメグの誕生日だからそれまでには気持ちを伝えたいんだけどなあ」
腕組みをして唸る陽介は、悩ましげに眉をひそめているけれど、やけに呑気に見えるのは、あたしの気持ちを知らないからだろうか。
「誕生日……」
「そ。だから俺、そのためにバイトめちゃくちゃ入れて金貯めてたんだ。ま、それがすれ違いの原因になっちまったわけだけど」
少し寂しそうに笑う陽介に胸がズキッと痛む。
そうさせたのはあたしが恵ちゃんに、陽介は面倒くさがりだからなんて言ったからだろう。
バイトで疲れてる時に自分との時間も作らせたら、陽介の重荷になってしまうと、恵ちゃんはそう思ったのだろう。
でも、今の陽介を見てたら、カノジョと過ごすイベントを面倒くさいとよく愚痴っていた頃の陽介とは様変わりしていた。
恵ちゃんのためにバイトを頑張り、恵ちゃんのことで頭を悩ませている陽介は、遊び人なんかじゃなく、カノジョを大切にする普通の誠実な男だった。
ならば、あたしは。
「だったら、プレゼント買って、今までのことも正直に話した上で、もう一度付き合ってほしいってストレートに言うしかないんじゃない?」
投げやりな口調になってしまうのは、背中を押すのが辛いから。
だけど、陽介が前に進むのならあたしだって立ち止まっていちゃダメなんだ。
「……やっぱり?」
「あたしと一緒にいるところを見た以上、全て話さないと疑う気持ちがずっと残ったままだと思う。まあ、あたしがいたことを許すかどうかはわからないけど……それでも、恵ちゃんが陽介のこと、本当に好きなら、逆転の可能性は今のままよりはあると思うよ」
「なるほどな」
「後は、気のきいたプレゼントを渡して、もう一度告白すればいいんじゃない?」
――もう届かない想いなら、せめてあなたが幸せになれるよう祈っていよう。
辛いけど、陽介が笑ってくれるなら。
陽介の紅潮した頬を見つめながら、あたしは心の中で問いかけた。
ねえ、陽介? あなたの目に映るあたしは、前に進んでる?