○○は、ごはんに入りますか?-7
潤んだ赤い瞳で見上げられ、また理性が吹き飛びそうになるのを感じる。
「……ぅ、あ……ラクシュさ……っ!!」
押し倒し、白い夜着に手をかける。
ちゃんとボタンを外そうとしたのに、もどかしすぎていくつか千切れ飛んだ。下着も取り払い、片足を持ち上げて大きく足を開かせる。
「俺の舐めて、こんなにしてたんですか?」
濡れそぼった秘所を指でなぞれば、透明な蜜がとろとろと絡みついた。
「ん……」
消え入りそうなほど小さな声で、ラクシュが頷く。気のせいか、頬の赤みが増した気がした。
自覚しなくても、彼女なりに恥ずかしがっているのかもしれないと思う。
何しろ、とびきり変わった吸血鬼だ。
柔らかな秘裂に舌を這わせると、真っ白な太腿がヒクンと震える。構わず舌を這わせ続ければ、頭上で短い声があがった。
「あ」
いつもと違う甘い声に、興奮を煽られる。溢れてくる蜜も、同じくらい甘く感じ、夢中でむしゃぶりついた。
「んっ、あ、あ……はぁ……あ、あ……」
ラクシュの指がアーウェンの髪に絡みつき、細い脚がぎゅうっと突っ張る。
「ん、あ!」
背中を大きく弓なりに反らせ、激しく痙攣を繰り返した後で、ぐったりと寝台に身を落とした。
荒い息をつき、ぼんやりと虚空を眺めているラクシュを抱きしめ、汗ばんだ額や頬に口づける。
「ラクシュさん……もう抱きたくて、狂いそう……挿れたい……」
ラクシュの頬を包み、何度も口づけながら強請った。
「……ん」
ラクシュの両腕が、ゆっくりと首に回される。小さく頷かれ、唇をペロリと舐められた。
「私も、アーウェン、欲しい……ちょうだい……」
誘うように揺れる腰を抱え、熱く蕩けた入り口に、痛いほど張り詰めていた雄を押しあてた。
クチュり、と淫靡な粘着音がし、柔らかく濡れた肉唇が先端に吸い付く。その心地良さに腰が砕けそうになった。
一息に力をこめると、狭い蜜穴は締め付けながらも人狼の雄を柔らかく受け入れる。
あまりにも気持ちよくて眩暈を覚え、夢中でラクシュの唇に吸い付く。舌を絡ませ歯列を舐め、余すところ無く味わった。
「ん、ん……」
口腔を嬲りながら揺さ振ると、ラクシュのくぐもった声が互いの口内で反響する。
―― やっぱり、ラクシュさんの声が好きだ。
流暢な演説にも、美しい旋律の歌にもならず、たどたどしい、欠け抜けだらけの会話が精一杯だけれど、アーウェンの一番欲しい言葉は、この声が全部くれた。
繋がったまま、肉付きの薄い肩にも、小ぶりの胸にも唇を落とし、吸い付いて甘噛みをくりかえす。そのたびにラクシュから甘い嬌声が零れ、いっそう熱を煽られる。
ラクシュの全部を知って、彼女にも自分を刻み込んでやりたくて、幾度も体勢を変えては、思いつく限りに堪能し、何度も欲を放った。
しまいに窓の外で、しとしとと小雨が降り始めころ、アーウェンも残りの精を全てラクシュの中に注ぎ込み、そのまま崩れるように眠りこんだ。
***
――そして。
「めっ」
ラクシュがアーウェンの前髪を、ペチンとはたいた。
「めっ」
もう一回、はたかれた。
「す、すいません……」
寝台で向かい合い正座しているアーウェンは、俯いたまま顔と声をひきつらせる。
ラクシュの叱り方が可愛いすぎて、顔が自然とニヤケそうになるのだが、無表情ながら、彼女が真剣に怒っているのもヒシヒシと感じるし……普通に動く表情筋の扱いに、非常に困る。
そもそも、ラクシュが怒っているのは、アーウェンがまた衣服を破ったからだ。
夜着のボタンを幾つかちぎったとは思っていたが、よくよく見たら、ビリッビリに裂けていた。
「アーウェン」
静かに呼ばれ、アーウェンはビクっと肩を震わせた。
「はいっ!」
「……お風呂」
「――――――え?」
「前に、言った。……お風呂、一緒に、入らせる」
ラクシュは自分の足から、唯一身につけていたソックスを、さっと脱ぎとった。
「あ、あの、ラクシュさん。ちょっと……」
アーウェンは焦って、彼女を推し留めようとした。
嬉しいんですけど。 一緒にお風呂って、もの凄く嬉しいんですけど。 罰どころか、美味しいご褒美なんですけどっ!?
黙っていたいのは山々だが、さすがにラクシュを怒らせたうえ、誤解を解こうともしないのは、騙すようで気が引ける。
「ラクシュさん! 俺、本当は……っ!」
決死の覚悟で告白しかけた時、不意にラクシュがアーウェンに向けて、両腕を広げた。
「抱っこ」
「え?」
「歩くと、中……気持ち、悪い……」
「は、はいっ!」
―― とりあえず、聞いてくれなかったラクシュさんも悪い。お風呂でたっぷり誤解だと証明して、それから改めて謝ろう。
(ラクシュさん、チョコケーキで許してくれるかな……)
偏食な吸血鬼の好物を、ありったけ頭の中で考えながら、アーウェンはラクシュを慎重に抱きかかえ、風呂場に向かった。
終