ト-4
「え」
驚いて顔をあげると
「山口はそんなミスする奴じゃないだろ。
ここのところ小さいミスをしてるのは気が付いてた。
今日みたいな大きいのをしなければ
男と女の事だからほっとくけどな。
今日のあれはでかすぎる」
「スミマセン」
「もしかして、土日に会えない事?」
森川さんが困った顔で優しく聞くから。
今まで我慢してた涙が1粒こぼれた。
「はい」
やっとのことで小さく言えば。
二人は、やっぱり。と言うように苦笑した。
「寂しくなった?」
優しく森川さんに確認されて
会社だという事も忘れて涙があふれる。
「スミマセン。仕事中に」
とぎれとぎれにそういえば
「構わない。有給中だ」
と、会社内なのに加藤さんは理不尽な事をいう。
「山口さんは初めから噂の事を知ってたんだよね?
それでもやっぱり耐えられない?」
耐えろ・・・・と言うんですか?
じっと森川さんを見れば
「山口。はっきり金子に言ったか?」
と、加藤さんが言う。
どう言えって・・・・言うんですか?
その答えが見つからなくて、
気持ちが定まらないのに。