狂気の選択 ★-1
もうひとりの強姦魔がレイプの痕跡残さずその後のセックス強要の為避妊具を着用したのに対し、少なくてもこの瞬間の藤岡精児の思考回路は大きく異なっていた。
(レイプの刻印…… 処女喪失の刻印をこの少女の心と身体に刻み付けて犯る!)
「うおぉぅ、出る、出る、出る、マンコの中に射精する」
瞬間、精児は覆い尽くしていた美桜の唇から離れると、レイプ達成の“鬨の声”を上げる。
「びくぅっ、びくぅっ、びくぅっ」
美桜の膣内で大きく脈打ち欲望全てを吐出続ける毒針。
極太の毒針から注ぎ込まれる体液は、破瓜の痛みに戦慄く膣内に侵蝕して行く。
その体液には少女を呪縛し続ける“猛毒”が含まれていた。
これは結果論になるがこの時のレイプによって、結城美桜が妊娠する事は無かった。
それは端的に言えばまだ中学二年生の美桜にとって、最悪の中での幸いであったかに思われる。
「ピッ、ピッ、ピッ」
膣孔から陰茎が引き抜かれても、美桜の瞳は大きく見開らかれ暫し呆然としていた。
「嫌ぁっ!」
しかし虚ろな意識の中、耳に届く聞き名慣れぬ電子音と閃光に我に返る。
(撮られた? 撮られてしまった。こんな姿を!)
喪失感に涙を流し続ける間も無く、処女を毟り取った男の声が耳に届く。
「さっさと身支度を整えるんだ! マンコ、レイプされたって、家族に知られてもいいのか!」
身勝手かつ傲慢な男の言葉に急き立てられ、美桜は自身に起きてしまった事を再認識させられる。
太腿付け根より流れ出る粘度の高い体液に雑じり合う過去の証。
それはほんの数十分前まで美桜が、穢れを知らぬ乙女だった証に他ならない。
目も背けたくなる惨状の証に、ポケットから引き出したハンカチをそっとあてがう。
「うぅっ、つうっ」
引き抜かれて尚形を歪ませる膣口は、まるで呆けた口元のようにも見えた。
そして破瓜の痛みと共に、注ぎ込まれた“猛毒”が美桜の胎内を蝕み侵す。
穢れを拭き取りパンティーを履く間も、男の撮影は続けられていた。
それが何を意味しているか理解出来ぬ程、この時美桜の精神状態は安定していなかった。
ただただ高圧的に接する男から、再び凌辱の痛みを与えられる事を恐れての動きであった。
(お願い、もう止めてっ! お願いだからもう刺さないで!)
その心身に刻み込まれた激痛は、幼き時指先ほどの昆虫から刻み付けられた激痛とシンクロしていたのだ。
「おいっ、おいっ、聞こえているのか?」
同じ空間に居させられる男の声に、現実世界に引き戻される。
「はっ、はいっ」
授業中不意に教師から名前でも呼ばれた様に、素っ頓狂なまでに素直に返事をする美桜。
「おいっ、お前は俺にマンコされたんだよ。その証拠がココに詰まっている」
美桜の前にデジタルカメラをチラつかせる精児。
「お願いっ、返してっ」
それを目で追う美桜は、覚束無い足取りで精児に掴みかかる。
「おっと」
おどける様に身をかわし玄関口を出る精児。
「返して欲しければ、次の日曜十一時にお前たちがゲームをしていた場所にひとりでくるんだ。いいか、必ず誰にも言わずひとりで来るんだ。そうしなければこのデジカメの中にある物全て、お前が通う中学校の校庭にばら撒いてやる」
不敵な笑みを浮かべ男は、そう言いのけると走り去っていく。
痛みと恐怖から立っている事さえやっとの美桜にとって、全力で走り去る男を追う事は出来なかった。
惨劇より三時間後、結城美桜の家族たちが帰宅する。
その間美桜の選択は、警察への通報では無かった。
シャワーを浴び肉体的な穢れを洗い流し終えると、乱雑になった玄関まわりを整理する事であった。
(こんな事誰にも知られたくないっ、こんな事不易(ふえき)君に知られたら…… )
中学二年生になった美桜に、ボーイフレンドと言える存在が最近できた。
付き合い始めて三ヶ月、一週間前にキスを済ませた同級生不易一文(ふえきかずふみ)。
それは美桜にとってのファーストキスであり、初めてのボーイフレンドと言えた。
そのときめく瞬間より僅か一週間で、見知らぬ男によりバージンレイプの被害を受けたのである。
悪夢のような出来事。
就寝中何度も目覚めてはを繰返す日々に、美桜の心は疲弊し正常な判断が出来かねる程に衰弱していく。
極論で言えば人間は一週間程度であれば、食事を摂らぬとも死ぬ事は無い。
しかし一週間睡眠を取れぬ事は、死に直結するらしい?
何れにしてもその身に受けた被害を誰にも相談出来ぬまま、日が過ぎ去り指定された日曜日を迎えてしまう。