そうだ 靴を買おう-1
*アーウェン視点から前章の冒頭と、過去回想です。
(ああ、ラクシュさん……今日もなんて可愛い!)
食卓の向かいでトマトスープを啜るラクシュを、アーウェンはうっとりと眺める。
彼女の短い真っ白な髪はサラサラと細く、僅かな動きに合わせて細かく揺れていた。
その綺麗な髪色が大好きだ。赤い瞳も、表情に乏しいところも、喋るのが苦手な所も、全部が大好きだ。
ほっそりした身体つきも好きだが、最近は痩せすぎなのが気になる。
ラクシュの見た目は15・6の美少女だが、本当はアーウェンよりずっと年上らしい。
彼女は泉から完成した姿で産まれ、朽ちるまでずっとその姿を保つ、吸血鬼という種族。
人狼のアーウェンとは、同じく泉から生まれる魔物でも、色々と違うのだ。
そして彼女は吸血鬼の中でも、とりわけ異質な体質で、野菜しか食べられない。他にも一般的な吸血鬼とは、かなり変わった性格をしている。
アーウェンは、そんな彼女が大好きだ。
十年前に奴隷商人の所から彼女に買われ、それからずっと一緒に暮らしていた。
赤いレンガでできたこの家は、元は偏屈な老人が隠居していたらしく、街からも他の民家からも離れてポツンと建っている。
静かで穏やかで、しかも大好きなラクシュを独り占めできている気分は最高だった。
しかしながら十年前。
アーウェンのラクシュに対する第一印象は、これだった。
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―― この女……っ、キモおおおおおおっ!!!