2.幸運は勇者以外にも味方する-7
調べていくうちに、村本に二つの思いが去来していた。
ひとつはやはり、憧れの瀬尾悠花がそんなところへ出入りしていたというショックである。画像ではもう一人の女の子が売春行為をしているだけであるが、この時は行わなかっただけで、悠花も別の所では行為に及んでいたのかもしれない。そう思うと失望は深かった。結局、理想のルックスを持った瀬尾悠花も、金のためにこんな淫らなことをしてしまうのだ。女なんて、そんなものなのだろうか。あの時のコンパニオンたちのように、金のためなら見ず知らずの男たちの男茎へ群がりセックスをする。
ネットニュースによると、瀬尾悠花はハーフ系のモデルと付き合っている、という話だった。ブログにも彼氏の存在を匂わせる投稿がある。
村本はそれを見て、もちろん残念な思いはした。とはいっても、このレベルの女の子ならば、それはモテるだろうし、彼氏にも困らないだろう。どこに出ても恥ずかしくないような、紳士かつイケメンと付き合って当然だし、自分のような醜男と恋愛沙汰に陥るなんてあるべくもない。そんな現実もよくよく分かっていた。
何度も自慰行為のネタで悠花を登場させてきたが、そのような諦観を常に持っていたからこそ、むしろ「夢の世界の女性」として、妄想の中でイヤラしい行為をしたり、させたりしてきたのだ。
だが、このような過去を知ってしまい、瀬尾悠花レベルの女でも、恋愛感情ヌキで性処理の道具になりうる、という事実を受け入れなければならなかった。何か心の奥底に大事にしていた信頼を裏切られてたようで、胸が苦しかった。
しかし、一睡もできないまま朝を迎えた村本は違う顔になっていた。
気がついたら、毎日、いや数時間置きにチェックしているブログ『ハルカな想い』を開き、コメントに書き込みをしていた。メールアドレス欄には、このために取ったフリーのメールアドレスを打ち込んだ。
このメールアドレスは瀬尾悠花のブログにしか使っていない。つまり、スマホの新着メッセージの送り主はブログに関わる者でしかあり得なかった。
ひょっとしたらコメント欄のメールアドレスに目をつけた勧誘業者かも知れない。だが、様々なブログを巡回して、しかもフリーのメールアドレスに広告メールを送るなんて非効率的なことをするだろうか?
震える指でなかなか受信ボックスを開けなかった村本の目に飛び込んできたのは、
『どなたですか? ブログに変なことを書き込むのはやめてください』
村本は唇の周りを一舐めして、
「忙しくなる……」
と、呟いてマンションを離れた。早い足取りは、やがて駆け足になっていた。