言えなくて…言えなくて-1
「もう、絆ったら！今日も部活あるんじゃない！」
怒り肩で、強めに、僕の所属する美術部の、教室より、少し狭い美術室の戸を開け
僕がこの日、放課後に部活は無いと、嘘を付いた事がバレ、つかつかと廊下を渡り
この部屋に僕に会う事と、文句を言う為やって来た。
そして読み通りの、困った質問をぶつけられる
「何でそんな嘘を付くのさ」
思わず身が引き締まり、それまで進んでた筆が止まり、僕は言葉を詰まらせ
返答が無い事に、不信感と怒りを覚えた様で
「ちょっと！聞いてるでしょ！」
僕だってこんな嘘は付きたくない。本当は何時もの様に、僕だけの特性ブレンドで出来た
未知の青であって青に見えないオリジナルカラーで、水槽の水彩画の未完成絵を得意気に
披露し、誰も頼んで無いのに「岩を描くのは以外と難しかった」とか絵の自慢薀蓄話を
する口が開き、生き生きと口を動かし、そんな飽きる話を杏は嫌な顔ひとつせずこんな話
に耳を傾けてくれて。それが僕と彼女との美術室でのやり取りになっていて。
口ずさみ、睨みつける彼女から顔を背けるも、そこを更に回り込み、僕と視線を合わせ
様としてきて、「ねぇ！」と更に声を挙げ。僕も耐え切れず重い口を開く。
「ゴメン、ちょっと…」
根も葉も無い反論、謝ればどうなるんだって話だ、５時間目の授業が終わり、最後の６時間目の授業の合間の休み時間で、彼女から何時もの様に僕の部活があるかどうか訪ねた時
何時の様に、あるって答えるつもりだったが、彼女に会いたく無い僕はつい今日は無い
と少し口ごもり、そう伝えてしまい、今更言い間違えた…何て言い訳は通用しなく
彼女が怒るのも無理は無い、彼女だって僕の事が好きで、僕が絵を描く姿を見るのが
何より楽しみな様で、そんな期待を裏切ったのだから。
「謝られて困る、何で嘘を付いたのかを答えてって言ってるの」
「…それは、その…」
あぁ、どうしょう、どう答えれば良い？
実は例の病気はまだ完治していなく、医者から２０歳まで生きられないって告げられて
だから、君を苦しめない為にも、何より僕自身、君と一緒に過ごして苦しい思いをしたく
無いから、君を避けてるんだ…。
何て言えやしない、そんな事を知ったら彼女がどんなに嫌な思いをするか
ショックで、テニス部に出なくなる、友達との付き合いが無くなる、一言も喋らなく
…彼女から笑顔が消える。
あぁ、考えれば考えるほど嫌なイメージしか浮かばない、当然か
ホント、神様はどうしてこんな酷い事を、憎んでも憎んでも憎み切れない
そう考えると、心がどんどん苦しくなり、知らないうちにうっすらと涙目になり
肩が小刻みに触れえ
そんな苦しむ僕の顔を目にした彼女は、それまでの険しい顔が緩み
「…まぁいいわ、でも今度はちゃんと言ってよ、私だって楽しみにしてるんだから」
大きなクイを残すように、彼女は部室を後にした