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forget-me-not
【女性向け 官能小説】

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残酷な優しさ-2

「あたしはね、」


大きく伸びをしながら横目で陽介を見ると、相変わらず口を半開きにして、間抜けなままの顔。


せっかくのイケメンが台無しになっている彼に、クスリと笑いが込み上げてくる。


「女の子に本気にならないで、要領よく遊ぶ男が好きなの」


「くるみ……」


「陽介は、女癖が悪くて、軽くて、いい加減だから、居心地がよかった。たとえカノジョがいても、心まで誰のものにもならない陽介だったから、あたしも罪悪感なく楽しめたの」


割り切った関係のあたしが、“陽介のカノジョ”というポジションに憧れたことは何度もあった。


でも、いくら抱かれてもセフレがカノジョになれるわけがなくて、陽介はいつも別の女の子ばかりをカノジョに選んできた。


その度に惨めになるものの、陽介がカノジョに不誠実であればあるほど、あたしは安心できた。


陽介が誰も好きにならない人間なら、誰のものにもならないと思ったから。


「でも、今の陽介は、あたしの求めてる陽介じゃない」


「…………」


「価値観の違いで恵ちゃんに無理させてる、なんて一人で勝手に不安になって悩んだり、自分から別れたくせに、別の男に嫉妬なんかしちゃったり。ハッキリ言って、メチャクチャカッコ悪いし重い」


ズバズバ言うあたしに、気まずそうに首の後ろを掻く陽介。


だけど、困ったように笑うその表情は、ひどいことを言われているのに晴れ晴れとしていた。


「いつもなら別れた陽介を慰めてあげる所なんだけど、恵ちゃんにすがり付いてるとこ見てたら一気に冷めた。こんなダサくて重い男なんて、もういらない」


「……きっついなー」


「こんなダサい男、恵ちゃんにあげる。あの娘は遊びも知らないような真面目なタイプっぽいし、あんたによく似合うよ」


ひたすら苦笑いの陽介だったけど、あの娘の名前を出しただけで少し顔が強張る。


誰も好きにならないと思われていた陽介の心は恵ちゃんの名前一つで揺さぶられている。


「……好きなら、もう一度やり直したいって伝えなさいよ」


ほとんど独り言みたいに呟いた言葉に、その長い睫毛を伏せていた陽介が、顔を上げた。


戸惑いを隠せない彼の視線とあたしの視線が絡まって、あたしは静かに微笑みながら小さく頷く。


――大丈夫、あたしは上手く笑えている。






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