残酷な優しさ-10
じんわり広がっていく煙を見ながら、今まで一緒に過ごしてきた陽介の姿を思い浮かべていたあたしは、ふと頭の中に光が射したような感覚を覚えた。
彼の背中を一度は押したものの、今の状態は、恵ちゃんがサヨナラを告げて去ってしまっているから、やり直したいとしてもかなり厳しいと思う。
だったら、恵ちゃんじゃなくてあたしがこれから先、隣にいてもいいんじゃないか、と。
陽介の隠していた想いを知ったあたしは、身を退こうとした決意が揺らぎ始めていた。
僅かな望みは、一筋の弱い光から徐々に輝きを増して行き、胸が高鳴る。
さっきまでの不安が混ざった動悸なんかじゃない。ずっと抱えていた秘密の想いが伝わる可能性に期待を持つ胸の鼓動。
自分を落ち着かせようと胸元をクシャリと握りしめ、あたしは彼の名前を呼ぶ。
「陽介……」
名前を呼んだだけで、声が詰まる。
何度も想いを伝えようとして結局は言葉を飲み込む、あの頃の自分とダブる。
だけど、もう自信がないなんて言い訳はしない。
陽介があたしを好きだったと言ってくれた、その事実が確実に勇気を与えてくれた。
――もう、言ってしまおう。
今まで言えなかった想いを告げるべく、あたしは震える唇を開きかけた。