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キラキラ狼は偏食の吸血鬼に喰らわれたい
【ファンタジー 官能小説】

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そうだ ごはん買いに行こう。-9

***

「ん……」

 目が覚めると、ラクシュは一人でベッドに寝ていた。
 ちゃんと寝巻きを着ているし、アーウェンが台所で料理をしているらしい音がする。

 あれは夢だったのかなぁと、ベッドに座り込んだまま、しばらくぼんやりした頭で考える。
 しかし、あれほど重かった身体は、嘘のように軽い。
 壁の時計は昼前を指していて、そっとカーテンの隙間から外を覗くと、空はうす曇だった。
 スリッパを履き、寝巻きのまま台所に行った。

「あ、ラクシュさん、おはようございます」

 アーウェンはやっぱり台所にいて、いつものようにキラキラ笑顔を向けられる。その首筋には、しっかりと二つの牙痕が残っており、ラクシュは目を見開いた。

「アーウェ……」

「すいません。ちょっと寝坊しちゃって、朝ごはんがまだ出来てないんです」

「あ、あの……でも……」

 うろたえていると、大きな手が伸びて、ラクシュの雪色の前髪をかきあげた。

「良かった……ラクシュさん、すごく顔色が良くなってますよ」

「アーウェン……きみ……変……」

「え!?」

 キルラクルシュに血を吸われた吸血鬼たちは、最低でも3日。長くて一週間は寝込んでいた。
 それをなんとか伝えると、人狼青年は頭をかいて笑う。

「ああ、人狼はすごく体力があるから、それで大丈夫なんじゃないですか?」

「……ん」

 どうしようか迷ったが、結局は頷いた。
 確かに吸血鬼は弱点も多いし、体力も魔物の中で最もひ弱といっても良い。そのせいか、非常に臆病で神経質な者が多いのだ。

「…………アーウェン……」

 エプロンの裾を掴んで、呟いた。

「なんですか?」

 見上げると、向けられた笑みは、やっぱりキラキラ眩しくて、大好きなのに直視するのはちょっと辛い。
 抱きついて、長身の胸元に顔を埋めると、アーウェンがビクリと震えた。

「ん?」

 少し顔を上げると、アーウェンの顔は真っ赤になっていて、口元がわなわなしている。

「だめ?」

「ら、ラクシュさん……ああ、もうっ!!」

 悲鳴のように叫ばれ、唇を貪られる。

 ―― ようやくアーウェンが我に返った時には、朝ごはん用に焼いていたマッシュルームとトマトが、黒焦げになっていた。

 終


「ラクシュさん! 朝ごはん焦げちゃったから、俺の血を飲みますか!?」
「……いらない」


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