呪縛の少女 ☆-1
身震いする快楽の中、陰茎を引き抜く。
曳き抜いてなおその開口部は、型崩れした様に僅かにその形を歪ませながら戦慄く。
破瓜の痛みに打ち震える少女の両脚は、ガクガクと震えが止まらずにいる。
《ヒタッ》
無形のポリウレタン容器に注ぎ込まれた欲望を少女の頬にあてがう。
初めて知る悍ましい感触に、たちまち全身に鳥肌が立ち始める。
「福井美涼さん、避妊具は着用しましたので、その点のみはご安心下さい。ただしこれから私が言う事は一度しか申しませんので、集中して良く聞いて記憶して下さい」
目隠しを外し体液の溜まった容器を少女の目前にかざしながらそう告げると、明瞭且つ端的に要求とそれに関する条件等を抑揚の無い口調で伝える。
当初の計画で言えば、二時間近く美涼を凌辱した後、一時間かけ繰り返し脅し賺しを繰返すはずであった。
しかし千章はそれをしなかった…… いや出来なかったのかもしれない。
いずれにしても大幅に時間を短縮し、犯行現場を離れる事になる。
千章自身にも上手く説明する事が出来なかったが、触れてはいけない…… いや、穢してはいけない者を穢してしまった感覚に苛まれ、逃げる様に自宅マンションに戻る。
おそらく福井美涼の部屋に居たのは、正味一時間程であろうと思われた。
実際三台のビデオカメラに録画された時間もそれに準じる程度の物であった。
レイプと言う犯罪行為よりも、福井美涼を穢した事に対し想像以上の罪悪感に苛まれる。
実際、後の二人目の被害者少女に対する接し方を考慮するとやはり大きな隔たりがあった。
それが何故なのか知る事になるのは、これより数年の時を待たなければならない。
計画は未だ手探り状態にあった。
確かにあの日必死に抵抗する美涼に挿入し、射精しその様子を記録した。
そしてその記録をもって処女喪失のショックに打ち震え、泣きじゃくる美涼に更なる要求を突き付ける。
「今後もセックスに応じなければ、レイプ動画を流布する」
当然そんな馬鹿げた要求に即応するはずは無かったが、計画通り一ヶ月後の指定場所等を伝えその場を後にした。
レイプは途中経過であり、計画の最終目的は継続的なセックスである。
美涼が安易に応じるとは考えてはいなかったが、千章も無為無策と言う訳ではなかった。
毎月第2日曜日の午後一時、市立図書館に隣接する施設の駐車場で待つ事を伝える。
それが何を意味するのか、聡明な美涼は千章が伝えた通り理解し記憶していた。
もっともその要求にはこうも付け加えられていた。
「約束の時間から一時間待つが、都合が悪ければ来なくて良い。それ以外の接触は一切しない。 ただし連続しての欠席は認めない」
被害者である美涼に対し、十分思考する時間を与えてみたのだ。
もちろんそれがプラスに作用するかマイナスに作用するかは、この時点で千章自体にも解らなかった。
レイプをした時点で、千章はいくつもの犯罪を犯しており文字通り犯罪者である。
加えて言うならば、性的な異常者と言ってもいい。
しかし、異常性欲者では無かった…… のかもしれない。
例えるなら美しい者を、彼なりに愛でていたのかもしれない。
実際、月1回以外は全く接触は取らなかった。
もちろんそれには、千章なりの打算もあった。
美涼に対して、精神的人格的には殺人に等しい行為をしている自覚はあった。
肉体的にも苦痛を与えている。
そこに加えて、継続的な関係を強いているのである。
闇雲に追い詰めストレスを与え続けても、すぐに破たんする。
最初から応じない可能性のほうが高い。
千章にしてみても、最初のレイプである。
《撮影と言う成果》も得ている。
失敗であれば、その経験を今後に生かせれば良い。
要求に応じなければ、撮影した動画を流布すると脅したが、そんなつもりは最初から無かった。
千章にすれば、そんな馬鹿げた事をしても何のメリットも無いのである。
単なるブラフ。
そのブラフに、美涼が乗って来るか……
2005年1月9日 日曜日、指定の時間帯。
年を跨いだこの日、千章は痺れる様な期待と緊張の中に居た。
美涼が来る来ないと言う選択肢以外、第3の選択肢も十分考えられるのだ。
そんな中、指定の時間帯を大きく回っても、美涼は現れなかった。
当然と言えば、当然かもしれない。
しかし、第3の選択肢が選ばれて無いだけ幸運かもしれなかった。
それにまだ可能性がゼロと言う訳ではない。
短い言葉のやり取りではあるが、美涼は言葉の意味を理解しているはずである。
苛立つ事無く、もう1ヶ月機会を待つ。