右側に君が居ない朝-1
うす曇,傘をさしてもまるで意味のないミストのような雨。
四月とは思えない冷たい外気に身震いをしながら深いため息をひとつ地面に落として、僕は一人通い慣れた道を歩く
沿道の桜は五分咲きほどだろうか…。まだまだ蕾が目立つ。
入学式の準備の為、僕は学校へと歩く。
去年まで隣にいた彼女は、セーラー服から一足先に、ひとつ大人を感じさせるブレザーに身を包んだ高校生と変わり、中学より早い、新しい学校生活をはじめている。
よって、僕はひとりきりでの登校となる。
浮き足立つなんて言葉には程遠い、僕にとってはなんともこ寒い春の朝だ。
中学生活はあと一年も残ってる。その一年はきっとうんざりすることばかりだろう、安易に見通せてしまうキツイ未来だ。
卒業式の帰り道、彼女は僕に言った。
『来年は、同じ学校の制服を着て、また一緒にこうして歩けるといいな…』
と。
そんな彼女の言葉に僕は俯いて「先のことなんてわからないから…」と曖昧な苦笑いで返した。
だって、成績の優秀な彼女とは違って、僕の成績は万年中の下ってところだから、同じ高校なんて正直無謀もいいとこだって 、さすがの僕にでも理解するのは容易いことだ。
彼女があの時どんな顔をしてたか、僕は知らない。
だって 、あの日の帰り道、僕は彼女の顔を一度も見ることなく歩いていたから。