それぞれの道2-1
「おー、がんばってるかーい」
その瞬間、ガシャン、ガタン、と騒がしい音と共に、聞き慣れた声が玄関先から飛び込んできた。
「やべっ」
久留米さんはバッと身体を起こし、あたしから離れる。
「えっ、ちょ、ちょっと待ってよ!」
取り残されたあたしは、慌てて乱れた着衣を直そうとするけれど。
ドカドカと上がりこんでくる足音、ノックもなしにいきなりガチャリと開けられたドアには到底間に合うことができなかった。
そして、
「お、いい眺め」
のんきな声の主が、あたしの恰好を見た途端、ニヤリと笑った。
モロにパンツを見られたあたしは、慌ててジーンズをずり上げて急いで居ずまいを正し、責めるような視線を奴に投げてやる。
「何しにきたのよ、塁」
あたしが凄んでも、奴はやっぱり相好を崩したまま。
そして、
「そっちを頑張んじゃなくて、引っ越し頑張れよな」
なんて皮肉を言いながら、わざとらしく荷造りをしている久留米さんの背中をバチンと叩いた。
「なんだテメエ、何しに来たんだよ。
大きい荷物運び終えてから現れやがって」
久留米さんはフウとため息をわざと大きく吐いて、塁をジロリと睨みつける。
「まあまあ、今日で久留米くんとお別れだから顔見にきてやったんだよ。
オレ達、友達だもんな」
塁がそう言って彼の肩をガシッと抱いて笑いかけると、久留米さんは首を横に振ってまた大きなため息を吐いた。