それぞれの道2-5
……ん?
あたしは目の前に飛び込んできた光景に、瞬きを何度か繰り返してから、目をグリグリ擦った。
マスカラで固まった睫毛の感触に、目の周りが滲んでしまったんではと焦りながらも、もう一度顔を上げて、目の前の光景を再び凝視する。
ふわりと薄く広がる煙草の煙の向こう側に、彼らは立っていた。
――しかも、なんだか二人ともニヤニヤしながら。
「お、噂をすれば」
先に言葉を発したのは塁だった。
なんだか状況が今一つ飲み込めないあたしは、ポカンと口を開けたまま。
そんなあたしに塁はゆっくり近づいてきた。
「玲香、話はもう済んだから」
「え……?」
「オレ、潔く退くわ。だから、これからは本当の意味での友達になろうな」
そう言って彼は、煙草を持っていない方の手をあたしの目の前に差し出した。