それぞれの道2-10
◇ ◇ ◇
「おーい、玲香?」
塁の呼び掛けに、ハッと我に返る。
気付けばあたしの目の前で手のひらをヒラヒラ動かす塁の顔と、少し離れたとこで焼き肉弁当を食べている久留米さんの姿があった。
「何ボーッとしてんだよ」
「あ、うん……」
一人回想モードに入っていたあたしは首をふるふる動かしてからペチペチ頬を叩いた。
「ほら、お前も飯食っとけ。塁が来たから一気に引っ越し終わらせるから」
久留米さんはそう言って、少し冷めたカルボナーラをあたしに寄越してきた。
「は? オレも荷物運びしなきゃいけないの?」
すかさず塁が素っ頓狂な声を上げて久留米さんを見る。
「お前、その為に来たんじゃねえのかよ」
「オレがそんな手伝いなんてするわけねえだろ」
「何なんだよ、お前。マジ何しに来たんだよ」
すっかり呆れた顔でため息をつく久留米さんを尻目に、塁はあたしにニッと歯を見せて笑った。
「いや、オレね、実は玲香にお願いがあってさ」
「え、あたしに?」
自分に人差し指を向けると、塁はウンウンと頷いた。