sweet confectionery-2
「室井先生って、男の人のわりに珍しいですね。こんな毎日のように甘いもの食べて平気なんですか?」
「え・・・おかしい、ですか?」
困ったように首を傾げる。
「あ、いえ。悪い意味じゃなくて。私的にはこんなに美味しそうに食べてくださって嬉しいんですが。
男の人ってあまり甘いもの、好きじゃないイメージがあって・・・。」
「好きですよ。」
お菓子が・・・と言いたいのだろうけど、その言葉に思わずどきり・・・としてしまう。
「あ・・・そうなんですか。甘党・・・。」
「お菓子も、貴方も。」
目を少し細め見つめられる。
「・・・・・・。」
かぁー・・・っと体が熱くなるのを感じた。
心臓がばくばくと高鳴る。
「そこは・・・さらっと流してください。」
固まる私に、室井はいつもの笑みを浮かべ再びクッキーを食べ始めた。
なんだ・・・冗談か。ほっとしたような、なんだか寂しいような・・・。
複雑な気持ち・・・。
「先生も一緒に作ったけど、誰かにあげるの〜?」
文化祭前日、20人集まったお菓子作りが無事終わった後ふいに生徒から問われる。
「へ?」
そう言われればそうだ。
手作り・・・ということで、私は他の子のを手伝えず、見本として自分用のものを作ったことになる。
どうしよう、これ。
生徒と一緒に作ったのはいいけど。
お菓子って、正直自分で作ったものを自分で食べるのはあまり好きじゃないんだよね。
その時、一人の人の顔が浮かんだ。
「一度・・・食べてるけどいいよね。」
今までのお礼も兼ねて。
なぜか言い訳を考えている自分に首を傾げた。
文化祭当日。
確か化学室でなにか実験を披露する予定の室井の元へ向かう。
なぜか少し緊張しながら歩く。
なんか、まるでバレンタインみたい。
渡り廊下でひょこっと頭の出た白衣の背中を見つけた。
「あ・・・」
声を掛けようとした時
「室井先生、これもらってください!」
昨日、一緒にお菓子を作っていた生徒が先に声を掛けた。
ずきん・・・
心が悲鳴をあげる。
彼が彼女を振り返る。
一瞬、目が合った。
思わず踵を返し、元来た廊下を帰る。
調理室の奥にある準備室に篭る。
彼は、お菓子を受け取ったのだろうか?
彼は、彼女と付き合うのだろうか?
心が悲鳴をあげる。