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sweet confectionery
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sweet confectionery-1

文化祭の日に手作りのお菓子を渡すと、両思いになれる・・・。
そんなジンクスがこの高校にはあった。


「季節外れのバレンタイン・・・かな?」
放課後の調理室でもう直ぐ焼き終わるであろうオーブンを見つめながら、家庭科教師をしている私、戸田 千春
は微笑んだ。


---カララ・・・
ドアの開く音。
「いい匂いがすると思ったら・・・。戸田先生、何を作っているんですか?」

ぼぉっとオーブンを見ているところに、声を掛けられた。
声の主は化学教師の室井 真澄。

「あ・・・、文化祭の前の日にお菓子作りの講師を頼まれて・・・。失敗したら嫌なので、前もって練習を・・・。」
予想もしなかった人の出現で、返事がたどたどしくなってしまう。

「あぁ、そうなんですか。」
にこり、と笑う。

そのまま無言。
「もし良かったら食べていきますか?」
社交辞令で言ってみる。

「あ、いいですか?」
思いのほか乗ってきた。


「でも、文化祭まで2週間ありますよね?」
もぐもぐと、焼きたてのパウンドケーキを頬張り聞いてくる。
「何を作るかまだ決めてなくて・・・。試作しているんです。」
なにしろ渡すのは次の日だから、その日に食べないといけないモノでは意味が無い。

ふ〜ん、と相槌を打った後
「じゃあ、また食べに来てもいいですか?」
突然の申し出。
他人、しかも男の人の意見は何を作るか決まらない私には嬉しい申し出だった。
「もちろん!ほんとに助かります!」


次の日から約束通り室井は放課後調理室に顔を出した。

「今日はクッキーですか?」
皿に並べたクッキーを見ながら話掛けてくる。

2人分の紅茶を机に置き
「定番すぎますかね?」
と聞いてみる。
「簡単にできる手作りのお菓子」を生徒が希望してきたから、なるべく手軽なものを・・・と思ったのだけど。
今まで作ったのは、パウンドケーキ、チーズケーキ、オレンジタルト、アップルパイ、クッキー・・・。

「いえ、バターが効いててとても美味しいですよ。」
柔らかく微笑む。
あまりに美味しそうにお菓子を頬張る室井にくすくす、と笑いが零れる。
普段はクールな・・・どちらかと言うと冷たい印象を与える切れ長の瞳がお菓子を食べている時は穏やかなものに変わる。
なんか、皆の知らない室井を自分だけが知っている様な気がして、得したような嬉しいようなくすぐったい気分。

「・・・どうかしましたか?」
食べている手を休め、こちらを伺う。


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