選択の権利-6
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「――っく!」
スルスルと衣服を剥ぎ取られ、この数週間で開発されきった性感帯を、的確に責められる。
鎖骨を甘く噛まれ、アンは息を呑んだ。
恥ずかしくてたまらないし、また顔を覆い隠してしまいたいけれど、チェスターは許してくれない。
彼も今日はちゃんと服を脱いでいるから、お互いさまだと言うのだ。
アンとしては、なんだか余計に恥ずかしい気もするのだが、素肌の触れ合う感触が心地よすぎて、反論する気も蕩けていく。
回数を重ねるごとに、アンの身体は感度がよくなっていたし、チェスターはアンがどこをどう責められるのに弱いか、熟知しているのだ。
胸にも肩にも丁寧に舌を這わせ、絶妙な箇所に軽く歯をたてる。
アンの一番感じるやり方で強弱をつけながら、太ももや下腹部へ手を滑らせていく。いつもなら何とか堪えられていた声が、とても我慢できない。
「んあっ! あああっ!!」
防音魔法があっても、恥ずかしいには変わらないのに、チェスターの思惑通りに喘がされてしまう。
力の抜け切った脚を大きく広げさせられ、濡れそぼった箇所を舐められ始めた頃には、頭はぼうっとして快楽の霞がかかっていた。
「あっ、あっ……」
身体の中で蠢く指に、何度も絶頂へ追いやられる。
眩暈がするほど快楽の火花が散り、大きく胸を上下させて、荒い呼吸を繰り返していた。
「アン……俺が欲しいって、言って」
不意に耳元で甘く囁かれ、フルフルと首を振る。もう羞恥の限界だ。
なんとか薄く開けている視界は、愉悦の涙でぼやけて、体中がガクガク震える。
それなのに、弄られている脚の奥が疼いてたまらない。
体内で小刻みに動かされる指が、濡れた音を立てて聴覚も刺激する。
「ほら、いい子だから……」
「や、ぁ……あ」
素直に言うことを聞けば楽になれると、囁かれているような気さえしてくる。
「アンに、お強請りして欲しい」
「あ、ぁぁ……」
指を引き抜き、耳朶を甘噛みしながら、チェスターが頼むように命じる。
「好きだ……愛してる……アン、早く……」
とびきり甘い鞭を与えられ、もうダメだった。
「あ、ぁ……チェス……タ……ほしい……ちょうだい……」
首に両手を回し、引き寄せて懇願する。両足を男の胴に絡めて、恥も外聞もなく強請った。
餓えきった獣のように、ゴクリと、チェスターの喉が鳴ったような気がした。
片足をかかえげられ、熱いものが狭間へ押し当てられたかと思うと、一気に突き入れられた。
「―――――っ!!!」
裂けたような鋭い痛みが走ったのに、慣らされきっていたせいか、ジンジンと疼くそこは、もうすでに焼け付くような快楽を感じている。
「ハ……最高に、気持ちいい……」
快楽を堪えるようにきつく眉をひそめ、チェスターが呻いた。
その様子が、本当に初めてだったのだと、ちらっと思わせた。しかしチェスターは何度か荒い息を吐くと、獰猛な笑みを浮かべてチロリと舌なめずりをした。
「楽しみだな。これでもっと奥の方まで、アンにしっかり俺を覚えこませられる」
「えっ!? あ、あ、あの…………」
不穏な囁きに、アンは快楽に歪んだ顔を更にひきつらせた。今でさえもう、いっぱいいっぱいだ。
串刺しにされた身体のどこもかしこも、熱く疼いてたまらない。繋がっている箇所はヒクヒクと痙攣しており、指先でそっとなぞられて悲鳴をあげた。
「あっ、あああ!!!」
「アン、可愛い。ゆっくり慣らした甲斐があった」
「だめ、だめぇ! まって……あ、あああ!!!」
腰を掴んで揺さぶられ、高い悲鳴とともに背が仰け反る。
「は、はぁっ、は、あああ……」
強すぎる快楽に、また涙が勝手に溢れてきた。
しゃくりあげる唇を舐められ、吐息を吹き付けながら囁かれる。
「……もう絶対、一緒にいられないなんて、言わせない」
「あ……はぁ……チェスター……」
トロリとした獰猛な恍惚の笑みを浮かべたチェスターが、指さきでアンの唇をゆっくりなぞる。
「一生、俺から離れられないように、身体も心も堕としてみせる」
「ぁ……」
思わずアンも口元が緩んだ。
今さら、何を言っているのか。もうとっくに堕とされて、繋がれてしまっているのに。
本能的に身体が動き、もう一度チェスターの首を引き寄せて、自分から口付ける。
じっくり考えて慎重に行動するのは、昔から双子の兄の役目。
アンはいつだって本能のまま動いていた。
下手に考えて慎重になろうとしても、そのたびに裏目に出て、いつもろくな目にあわなかったから。
だから今夜も人狼少女は、本能のつげるまま、愛しいつがいに全身で恋を伝える。
終