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人狼少女は本能のまま恋をする 
【ファンタジー 官能小説】

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夜の困惑-1

 二週間が経ち、バーグレイ商会の馬車隊は、とある僻地の農村を訪れていた。

 決まった国籍を持たぬ流浪の隊商は、大陸中に多く存在する。
 彼らは国から国へあらゆる品々を運ぶ者であり、大きな都市よりも、主に大陸主街道から外れた僻地を回る。
 特に、医師もいない村では、隊商が錬金術ギルドから仕入れる医薬品の常備は欠かせない。
 村人は軟膏に丸薬、粉薬など保存の効く薬を買い求め、村で採れた農作物などを売るのだ。それらはまた他の土地で望まれる品であり、品々は流通していく。
 もちろん隊商同士の商売競争はあるが、ある程度は連絡を取り合い、巡回ルートや品がかぶりすぎないようには配慮されていた。

 北国フロッケンベルクから自治都市の乱立地帯を抜け、豊かで広大なシシリーナ国や、多数の小国たち、はるか西の強豪なイスパニラ王都までも巡り、一つの地を巡るごとに荷台の品物は少しずつ入れ替わる。
 そして一年をかけて、またフロッケンベルク王都へ戻ってくるのだ。
 何か特別なことがない限り、それがバーグレイ商会の基本的な巡回ルートだった。 

「あれま! チェスターが、ついに嫁さんをもらったのかい! しかもあたしの思い違いでなけりゃ、昔に何度か来た、双子の片割れじゃないかね!」

 買い物かごにいっぱいの薬品を買い込んだ農家のおばあさんは、アンがチェスターの嫁と知ると、すっとんきょうな声をあげた。
 アンも嬉しくなり、差し出された皴だらけの手をとる。

「私のこと、覚えていてくれたんだね。アンジェリーナだよ!」

「アンタみたいなお転婆娘は、そうそう忘れられないよ。まぁまぁ、すっかり美人になっちまって」

 おばあさんは丸い頬をニコニコと緩ませ、今度は荷台に品物を並べているアイリーンへ声をかける。

「ついこの間まで、チェスターも小さな腕白坊主だったのに、早いもんだねぇ」

「ああ。アタシも年をとるわけだ」

 アイリーンが笑う。
 彼女は二年前、息子が一人前に隊商をまとめられるようになったと判断すると、さっさと首領の役を譲り、引退してしまったのだ。
 もっとも、それなりの年齢とはいえ、まだ十分に元気で生気に満ちている。隊商には同行しているし、困ったことがあれば知恵も貸す。
 けれど、基本的にもう隊商の指針に口は出さない。
 これはバーグレイ家の昔からの慣わしで、アイリーンの先代首領も、その先代もそうだったらしい。

「本当にいい嫁さんを貰ったよ」

 他の客と話し終えたチェスターが、不意に割り込んできた。愛しそうにこげ茶色の眼を細め、アンの肩を抱き寄せる。

 あからさまなノロケに、買い物に集まっていた村人たちから大喜びではやしたられて恥ずかしかったけれど、幸せすぎてくすぐったいような気分だった。




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