それぞれの道1-5
でも彼は、あたしが寂しいと感じていると、きまってちょっと気のきいた言葉を与えてくれるのだ。
まるでアメとムチを使い分けているかのように。
「それに俺、お前が寂しい時には飛んでいくから、心配すんな」
ほら、彼がくれるアメはこんなにも甘くて、あっという間に病みつきになる。
それがたとえご機嫌取りだったとしても、少し照れたほんのり赤い顔を見ればたまらなく愛おしくなった。
柄にもないセリフを吐いた彼は、気恥ずかしさからか、段ボールにしまうはずだったアルバムを、意味なくめくったりしていた。
あたしの視線も自然と彼の手元に移動する。
透明でシンプルなフォトアルバムは、無印良品のもので。
この中には、あたし達が付き合い始めてから、たくさんの思い出を残したくて撮った写真達が収められている。
そんな二人の軌跡がチラチラあたしの視界に入ってきた。