それぞれの道1-11
久留米さんは必死で笑いをこらえるように身体を震わせていた。
「ねえ、なんでこんな写真撮ってんの!!」
これならベッドの中のあられもない自分を撮られていた方がなんぼマシか。
はっきり言って、このフォトフレームの中にはお世辞の言葉が一つも見つけられないような、化け物が写っていた。
そんなブッサイクな自分の姿を愛する人に見られていて、しかもフォトフレームに飾るなんて、これ以上の恥辱はないような気がする。
「いや、感動したの。お前の寝顔見てさ。眼球運動って初めて見たんだもん。
あまりに感動したからついつい動画まで撮っちゃった」
そう言って彼は携帯をジーンズのポケットから取り出し、すばやく操作して、問題の動画を再生させてからあたしに向けた。
携帯を手にした瞬間、いきなり大音響で聞こえてきたあたしのいびき。
女の子のものとは思えないほどのダイナミックないびきにあたしはまたまた固まってしまった。
口がガアガア伸縮するあたしの寝顔はさしずめホラーに出てきそうな不気味な代物で、クックッと笑い声を押し殺す久留米さんの声が小さく聞こえていた。
『すっげえ寝顔……』
そう言いながら、画面はあたしの瞳にクローズアップしていく。