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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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それぞれの道1-10

おそらく久留米さんの車に乗っている時のものだろう、グレーのシートがあたしの背後に写っている。


助手席の窓からは紅葉の綺麗な山が遠くに写っていて、そう言えば二人で紅葉を見に行ったことがあったな、と自然に思い出されてきた。


デートの時のワンショット。別に不自然な所はない。


いや、確かに問題は無いんだけど……。


この紅葉デートの帰り、あたしは疲れて助手席で眠ってしまった、これはよく覚えている。


気付けばあたしの家の前に着いていたから、よっぽど眠りこけていたんだろう。それはその時の写真だった。


無邪気な彼女の寝顔を激写。これだけならありがちだし、無防備な姿をお気に入りにしてくれると確かに嬉しい。


嬉しいんだけど……。


「久留米さん、これ本当にあたし?」


写真の中には無防備で無邪気とはかけ離れたあたしの姿がそこにあった。


切れ長の瞳は半ビラきで。


鼻の穴は大きく膨らんでいて。


だらしなく開いた口からはよだれが垂れていたのか、口の端が光っていた。




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