これって…洗礼といいますか?-1
ほんの数秒の暗闇に些か不安になりながらも、あたしをしっかりと抱き抱えてくれてる結月の体温で、どこか安堵も感じてる。
視界を遮断していた闇が消えて、目に飛び込んできたのは、なんていうか……ここ…は。
大して広さのない雑然とした石造りの薄暗い場所に、辛うじて寝床と呼べなくはない粗雑なベッドらしきものが真ん中にひとつあって。
どこに視線を遣っても、石牢にしか見えないこの場所に、否応なしに体が強張ったあたしに、
「ここはね、洗礼の部屋だよ」
結月があたしをそっと下ろして暢気な声で囁いた。
「洗…礼…? 洗礼ってなによ…」
なにも分からない状態なのに、スタンスを崩さない暢気な結月が少し怖くなって、声が上擦ってしまったあたしに、
「大丈夫だよ。環ちゃんはさっきみたいに、ただ気持ち良くなってくれたらいいだけだから♪」
「で、でも…」
こんなわけのわからない状態なのに。
腑に落ちない気持ちで、壁に凭れて黙ってこちらを伺い見てる刀鬼にチラリと視線を向けると、
「残念だが、時間が余りない。結月のいう通りに任せて、己の欲のみに従え」
素っ気ない冷たい言葉で遮られた。すると、
「むぅ…、また刀鬼を見てる…」
結月は少し拗ねた口調であたしの後ろから首筋に唇を這わせてきた。
「ちょっ…待ってよ! こんな状態で! は…むぅ…ぁ…ん……」
「ん…、大丈夫だよ…大事なのは場所じゃない」
背中に結月の体温を感じながら唇を甘噛みされて、囁きながら、口内に舌を入れ込んで絡ませてきて、会話を遮断されてしまう。
理解できないもどかしさ。だけど、それ以上に結月の体は居心地が良くて。
結月のキスは濃密なのに甘くて優しくて体が痺れるように疼いてしまう。
ついさっきまで花畑でされてた事がまだまだ鮮明に体に残ってて、胸の突起を服の袖がかすっただけで、あえぎが漏れて体が小さく跳ねてしまう。
「環ちゃん、もうこんなに硬くなってる…」
「ん――はぁっんっ!」
そんな敏感な2つの突起をやんわりと摘まんで捏ねられただけで、仰け反ってしまいそうになるくらい気持ち良くて。
細くて透けるように白くて長い綺麗な結月の指があたしの胸を玩ぶ様が嫌でも視界に入る体制。
ずるいよ…こんないやらしい玩ばれ方されたら…。
目線を少しあげると、刀鬼と向かい合って視線がぶつかってしまう。
刀鬼はあたしをじっと見つめて、口元だけに微かに笑みを浮かべてる。
笑ってないその冷たい紅い瞳は、淫らなあたしを詰っているような気がして、恥ずかしさで体の芯が熱くなって、あたしの下腹部は狂いそうに疼きを増して秘部はみるみるうちにとろみを帯びて蜜濡れになってしまった。
「刀鬼に見られてると、気持ちいい?」
「ぃ…ぁあっ!…や…はあっ…ぁ…ん…」
耳をチュクチュクと舌で犯されながら、胸を揉みし抱かれながらの結月の意地悪な責めに、辛うじて立ってる足が、ガクガクと震えた。