僕らは知り合う-2
しかし、チューハイの味といい、お菓子のチョイスといい…悔しくもどれも僕好みで、ガサツそうに見えてかなり気遣いの上手い人なんだなと言う事が分かって、ちょっと小島の事を見直したりもして。
「小島さんて…すごいよね。こんな僕にまで細かい気配りをしてくれてさ…。やっぱり仕事が出来る人って違――」
「そう言う事言われるの嫌いだから」
小島は、僕の言葉を遮り鼻をひとつ鳴らしてビールを飲み、息をつくと、
「私は自分で自分の事を低く見下げる事言う奴って好きじゃない」
僕に真剣な目を向けてそう言い放ち、
「こんな僕とか、僕みたいなとか…。そうやって自己否定的な態度を取られたり、一々謝られて会話を遮られると、 少しでも距離を縮めたいのになんだか拒まれてるみたいで近付いちゃいけない気持ちになるじゃん」
膨れっ面で夜空を見上げ、
「あなたの事を理解したい、近付きたいって望む側からしたら、そういうのって、凄く寂しくてムカつくし…」
…僕は漸く小島の膨れっ面の意味が理解できた。 小島は決して上から目線ではなく、ちゃんと僕を対等と見て、僕を理解して話したいって望んでくれてたって事。
それなのに僕は、小島のそんな気持ちなんて考えようともせずに、謝る事で適当に流してた。
「ごめん…、ほんと、ごめん…」
この期に及んで、また謝る自分に苛立った。 だけど何故だろう。いつものように誤魔化す為の曖昧な笑いが出てこない事に、自分の発したちょっと必死な声色に惑った。
「許す」
「え?」
小島の口から聞こえた思いがけない言葉に驚き、呆けた声が喉からこぼれ落ちた。
「だって、今のごめんは、めんどくさくて遮断しよう常套句じゃなくて、少しでも私を理解して見よう気持ちが伝わるごめんだってわかったから」
そう言って僕に視線を向けて、
「だから、許す」
と、柔らかな笑みを浮かべた。
「あ、ありがとう…」
なんだか猛烈に気恥ずかしさが込み上げるのを誤魔化す為に、僕は缶チューハイを勢いよく喉に流しこんだ。
ヤバイ、一気飲みしたせいで頭がちょっとふわりと回った。 そんな僕を見て小島は、
「ちょっ、あからさまに照れ過ぎだろ…」
とても愉快そうに笑い声をあげた。
「ちょ…そっちこそ、笑い過ぎだろ…」
「だってあんたが笑わせるから仕方ないじゃん。ほんっとびっくりするくらいかわいい奴だよね、遠山君はさぁ」
「お、同い年の男にかわいいとか言うなよ! 失礼だろっ !」
酔った勢いもあり、砕けた会話で小島に言い放つと、
「ふーん、男…ねぇ…?」