わ-6
「常務がうちの部長に企画自体をストップかけたんだと」
「へ〜」
それはそれは。
「じゃぁ、いつもの「今月の社員」の男女のダブルインタビューはいかがですか?」
「それいいね」
いつも一人なのを倍のスペースにするだけだけど。
「上司じゃなくてカッコいい男性や可愛い女性職員を載せれば
みんな読むんじゃないですか?」
「なるほど。インタビューは山口に任せるよ」
「え!何でですか!」
私、インタビューしている暇なんかないんだけど!
「じゃぁ、社長のインタビュー、山口やるか?」
どっちもどっちの仕事だ。
「人選は山口に任せる」
めんどくさい事を押しつけて!
「分かりました。期限は?」
「来週の水曜日まで」
「分かりました」
私はとりあえずスケジュール帳の来週の水曜日に印を付けて
足早に社外の打ち合わせに急いだ。
待ち合わせに5分遅れた私を、一緒に打ち合わせに向かう加藤さんが
書類を確認しながらコーヒーショップの椅子に座って待っていた。
あぁ。この人が好きだったな。
一瞬自分の心を支配した感情を
無理やりグッと押し込める。
今更加藤さんを好きでいても辛いだけ。
加藤さんに彼女が出来る前に、
加藤さんに気持ちを伝えなかった私が悪い。
もっとも。
伝えたところでどうにかなっていた可能性は低いけど。
加藤さんは溺愛する彼女を、皆に見せびらかすように
社員が集まる居酒屋に連れてきたりした。