わ-4
あれからホテルを出て
二人でファミレスで朝食を取った後、金子さんは
「毎週金曜日の夜、俺、真樹を予約していい?」と笑った。
金曜日に山梨から来て、
日曜日までこっちに知るのか知らない。
だったら土曜の夜は一体誰と過ごすのか。
日曜の昼間は誰と過ごすのか。
そんな事はもちろん聞く勇気なんかなくて。
ああ。そっか。
と思い当たった。
すみれが言っていた「いい男」=「セックスの上手い男」。
どこからそんなうわさが流れているのかしらないけど
少なくともこの男は女に誠実じゃないらしい。
セックスが上手いとうわさが流れるほどの
経験がこの男にはあるんだろう。
私は一晩だけ過ごしたこの男を手放したくないという
何とも不思議な感覚に浸っていた。
加藤さんを忘れられるなら。
金子さんが金曜の夜を私にくれるなら。
私はありがたくもらえばいい。
『0』か『10』かなら、10でも欲しい。
たとえ、『100』が手に入らなくても。
「金曜日ね。覚えてたら空けておく」
そういいながら私は自分自身を納得させていた。
「俺たちの関係なんだけど」
うん。分かってる。
「セフレ。でしょ?」
女から言われることは稀なのか
金子さんはほんの少し目を見開いて意地悪く笑った。
「大丈夫。社内の人にばれないようにお互いに気を付けましょう」
そう言って私はコーヒーの最後の一口を飲み干した。