第一話 馴れ初め-3
4.
淳一先生の手が、肩から腰に回って、スカートの下から手が入って来ました。
腰の右にコンソールボックスがあって、これ以上先生のほうに寄れません。サイドブレーキとギアシフトのレバーもあります。
言い遅れましたが、ここは先生の車の中なのです。
駐車場の生垣に寄せて止めてあります。夜は、殆ど人の出入りはありません。車の中は暗いので、外からは見えないんです。
先生の指が、パンティの脇からもぐりこんで来ました。
唇は舌で攻められ、片手で乳首を嬲られ、今度は右手が恥毛を探っています。指が伸びて、クリトリスに届きました。
「先生、私、恥ずかしい。もう、グチョグチョでしょう?」
「いやあ、師匠、すばらしい。僕のかみさんは、セックスがまったく駄目だったから、大感激だよ。師匠は、いつもこんなになるんだ」
「先生のリードがお上手なのよ。先生が悪いのよ。責任取って下さいな」
「僕だって、もうギンギンで、痛いくらいだ。何とかしたいけれど、このコンソールとレバーが邪魔で、どうしようもないなあ」
「先生、私はもう10年近くも空き部屋だったのよ。今度ゆっくりと可愛がってくださいな。
私は我慢に慣れてるけど、先生のほうが心配だなあ。男の方って、我慢が出来ないのでしょう? 他に好い方がいらっしゃるなんて・・・そんなの嫌ですよ」
「そんなのいませんよ。師匠が僕と付き合ってくれるなら、一生、師匠一筋で通します」
5.
このような経緯で日本舞踊の師匠、花柳梓とタンゴの先生、中村淳一はめでたく意気投合したのですが、なにぶんにも人様から師匠、先生と呼ばれる二人、人目を気にしないわけには参りません。
片や施設に入っているとはいえ妻のいる身、片やご主人が亡くなって未だ一周忌も済んでいません。こんな二人が、そろってホテルに入るところもでも見られようものなら、あっという間にうわさが広まって、この狭い世間に住み難くなってしまいます。
窮すれば通ずと申しますが、車の中というのは結構な密室となるものです。
1台だけで停まっていると目立ちますが、何台かが並んでいますと、人は気にも留めません。まして夜間は、外から車内は見えません。師匠と先生は、そんな場所を見つけては、逢う瀬を楽しんでおりました。
「師匠、いい場所をみつけました。今夜はそこに行ってみましょう」
「先生、ごめんなさい。私がお稽古を休めれば、どこか遠くに行って、ゆっくり出来るのに、ご不自由させます」
「あそこなら、今よりもましです。とにかく行ってみましょう」
淳一が車を停めたのは、公園の出入り口通路で、片や切り立つ崖。崖の上から、木々の枝が道路を覆うように枝を張っています。
茂った枝々の隙間から、木漏れ日ならぬ三日月が、チラチラと漏れてきます。
崖側には駐車禁止の札が出ており、反対側は古びた家が並び、午後10時までは駐車禁止。それ以降は駐車が出来るので、近所の家が駐車場代わりに使っている様子。
淳一は、巧みに車庫入れで車の列に割り込む。
「ここは夜間、公園に車の出入りがないし、人もほとんど通らない。この前、1時間ほど試してみたんだ」
「なんか、とてもロマンチックなところですねえ」
「師匠、後ろの席に移ろう」