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BLACK or WHITE?
【幼馴染 官能小説】

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−6−-4

「ねえ、杏子……」
「なあに?」
昨夜、彼の家から帰って以来、姉はますます憔悴しきっていた。相変わらず、自分には何も話してくれない椎奈をもどかしく思いながらも、力のない姉の呼びかけに、妹は柔らかく返事をした。
「えっち、したことある?」
「……え?」
予想もしていなかった驚愕の問いかけに、杏子は大きな瞳をますます見開いた。
「な、ないよ、どうして?」
動揺を何とか包み隠して返事をするが、昨夜の流れから当然の想像に行き着く。
(まさか……)
「お姉ちゃん、もしかして昨日、孝ちゃんと……」
震えそうになる声を懸命に堪えて、彼女は笑顔を貼り付けたまま、最悪の想定を口にした。
「うん、しちゃった……」
ほんの少し間を置いた後、椎奈は恥じらいながら小声でそう答えた。
やはり、そうなのか。赤裸々な告白を聞いて、一瞬、杏子は息を呑んだ。あれだけ、姉を傷つけるようなことは許さないと、釘をさしておいたというのに。すぐにでも、彼を問い質してやろうと意気込む杏子の心とは裏腹に、
「わからないんだ……」
椎奈は弱々しくぽつりと、呟く。
「しちゃったらさ、誰とでもこんな感じになる?」
「……どういうこと?」
ふう、と椎奈は深い溜息を零すと、
「孝太郎は昔からずっとそばに居て、友達以外あり得ないって思ってたのに、その…した後は何だかふわふわ柔らかくて、胸がいっぱいで、満ち足りたよう感じになって……」
顔を赤らめながら話す椎奈を、杏子はただ黙って見つめた。椎奈が彼女にこんな相談をしてくるなんて、初めてだったのだ。
「あー……あたしってもしかしてただのエロい女なのか……?」
話しているうちに思考が混乱してきたのか、ぐしゃぐしゃともどかしげに、椎奈は髪を搔き回すと、不貞腐れたように床に大の字に寝転がる。
そんな姉の様子を見て、杏子は思い悩んだ。椎奈の孝太郎に対しての気持ちは明白なのに、それを自分が気付かせてやらねばならないのか。
(ふん、何で私がわざわざそんなこと……)
「あいつ……しばらく距離置こうなんて言いやがってさ。もう、何でこんなにむかつくんだよ……」
そんな風に口汚く愚痴りながらも、不意に傷ついたような表情を見せる。
誰の前でも、明るく、優しく、そして強くあるべき。今まで、それを信条としていた姉だとは思えないぐらい、今の姿はまさに、誰の目から見ても、ただ恋に思い悩む一人の少女だった。
―――ようやく、杏子は決意した。
隣人に対する、個人的な敵対心よりも何よりも。大好きな姉が、いつも笑っていてくれるのが、自分にとって一番嬉しいことなのではないかと。
「……あのね、私は経験ないからよくわからないけど。例えば、お姉ちゃんは別の誰かとそういうこと、したいって思う?」
「絶対にいやだ」
即座に、きっぱりと、椎奈は答えた。
「じゃあさ、もし、孝ちゃんと別の女の子が付き合ったりするのって……どう思う?」
その問いには、しばらく椎奈は考え込んだ。付き合うということは、当然昨夜のようなことをするというわけで。あの時の孝太郎の一瞬一瞬全て、他の誰にも決して知られたくない。自分の中に、突然の強い独占欲が生じたことに、椎奈は戸惑いを覚えた。
だが。
「そっか。ありがと、杏子」
のっそりと起き上がると、椎奈は吹っ切れたような、晴れやかな笑顔を見せた。


その日の夜。
昨夜の出来事を頭の中から追い出すかのように、孝太郎は明日の試験勉強に打ち込んでいた。すると突然、窓に何かが軽く当たったような音がした。カーテンを引いて窓を開けると、
「こんばんは」
うっすら微笑んだ椎奈が、欄干に頬杖を突いて、ひらひらと手を振っていた。ベランダには、恐らく彼女が投げたのであろうソフトボールが転がっている。孝太郎はそれを拾って、椎奈に投げ返しながら、
「……距離置くって言っただろ」
と、無愛想に言い放つ。
「あー、そんなもん、お前が勝手に言っただけで、あたしは承諾した覚えないもん」
椎奈は、からからと笑いながら、彼が投げたボールを軽々と受け取った。
「何なんだよ」
孝太郎は微妙に彼女と目線を外しながら、低くそう呟く。ぐちゃぐちゃになった心の収拾がまだついていないままだというのに、いつもと変わらない笑顔を自分に向ける彼女。やはり、何とも思われていない証拠だろう。いくら幼馴染とはいえ、今はまだ、自分の心に土足で踏み込んでほしくない。
「え?ただ会いたくなっただけ。つーか今からそっち行くし、ちょっとどいてて」
「は?……っておい!!」
次の瞬間、孝太郎は椎奈の行動に目を瞠る。欄干を乗り越え、彼の家のベランダに飛び移ろうとしているのだから。その距離は1メートルもないとはいえ、万が一落ちてしまえば大怪我は免れない。
「ちょ、やめろって!」
無鉄砲な彼女を止めようと、もう夜中だというにもかかわらず、孝太郎は必死に叫ぶが、
「だーいじょうぶだって。運動神経にはかなり自信あるから。お前も知ってるだろ?」
椎奈は不敵に微笑んで見せた直後、彼の家のベランダへと危なげなく飛び移った。
「ほらな」
にかっと、屈託なく微笑む。確かに、彼女は子どもの頃から木登りが得意だった。孝太郎はほっと胸を撫で下ろすと共に、とりあえず彼女を自室に招き入れて窓を閉めると、
「……バカか、お前、何やってんだよ!!」
しかし、彼女は怒る彼など素知らぬ顔で、
「何って、夜這い」
椎奈は平然とした様子でそう言いながら、孝太郎の体を彼のベッドに押し倒した。
「なっ……」
椎奈に馬乗りになられて、孝太郎は思わず狼狽する。
「男として、見てもらいたいんだろ?昨日の、すごい良かったから、一度きりなんていやだ」
うっとりとした眼差しで孝太郎を見つめながら、彼の胸の上に手を置いて、優しく撫でる。その熱に、うっかり彼自身が反応しそうになってしまう。


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