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BLACK or WHITE?
【幼馴染 官能小説】

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−4−-2

「孝ちゃんちっていつも綺麗だねー」
「そりゃどーも」
本気なのかお世辞なのかよくわからない彼女の言葉に適当に相槌を打ちながら、孝太郎は急須に湯を注ぐ。
「ご飯くらいは炊いてるの?」
「あぁ、朝メシくらい簡単に自分で作ったから」
「そう。じゃあ、早く食べようよ。たぶん、ウチでも今頃お母さんとお姉ちゃんが食べてる頃だよ」
正直、杏子と2人きりだと息が詰まる。自分よりも年下だというのに、この少女の態度のでかさときたら。彼は心中でそっと溜息を吐いた。
それから、2人で軽く会話を交わしながら食事をしていると、
「ねぇ」
「ん?」
「孝ちゃんってさー、お姉ちゃんのどこが好きなの?」
出し抜けに、核心を突くような問い掛けをされ、孝太郎は動揺を隠しきれず若干頬を赤らめる。
「何、そのキモイ反応」
「悪かったな」
ぶっきらぼうにそっぽを向く。これだから、杏子はやりづらい。
「で?どこが好きなの?」
「だから、何でそんな事言わなきゃなんねーんだよ」
「私にとってお姉ちゃんは誰より素敵な女の人だけど、男から見れば、お姉ちゃんみたいなタイプって何となくウケ悪そうだし」
いけしゃあしゃあとよく言う、と思いつつも、孝太郎は少し考えるような素振りを見せた後、
「そうだな。単純だから、お前みたいな底意地悪くても見た目美少女だと男はあっさり騙されるんだよな」
「は?何か言った?」
杏子の愛らしい顔が、一瞬にして般若のように険しくなる。
「いや、独り言。そうだなぁ、すげぇ気が合うし、真っ直ぐで真面目すぎるとこ、お節介すぎる時もあるけど他人に優しいとこ、その割に自分は人に甘えるのが下手で不器用なとことか……守ってやりたくなる」
「ちょっと、鳥肌立つからやめてよ、マジできもいんだけど」
間髪いれず、杏子はぶるっと身震いするような仕種をして、露骨に不機嫌そうな顔をする。
「そっちが言えっつったんだろ」
「ったく、ワガママなヤツ」、と彼は悪態を吐いたが、彼女にはあまり気にならなかった。
周囲の姉の評価からして、“守ってあげたい”などといった言葉はまず出ない。明るく元気で、ある意味男よりも頼りがいのある女だと思われているからだ。
いつも真っ直ぐな彼女は、逃げ道や言い訳を一切用意せず、常に全力投球。しかし、その分傷つきやすい、繊細な部分を持ち合わせている。彼女が普段表に出さず隠している、脆さや女らしい部分をわかっている人にしかその言葉は出ない。
一年早く生まれている彼の方が、自分よりも姉との付き合いは長いのだ。同い年だから、姉と同じ目線で姉の事を見ている…。
きっと、姉が自分に頼ってくることなんて、今までもこれからも絶対にない。杏子は、わけのわからない苛立ちと敗北感を覚えた。
「どうした、急に黙り込んで」
「うっさいな、ほっといてよ」
「お前、ホント自分勝手だよなぁ」
あんな赤面ものの告白を強要しておきながらと、さすがに彼も不愉快になり、少し二人の間に殺伐とした空気が流れた。
いつから、杏子とはこんな風にしか接する事ができなくなったのだろう。彼女は何故か自分にだけ突っかかってくるし、気難しくて扱い辛い。姉とは正反対だ。孝太郎は嘆息し、気を取り直そうと湯のみに口を付けて緑茶を飲もうとする。
「孝ちゃん。こういう時いつもお姉ちゃんと2人で何してるの?」
「何って……」
「もし、今日お姉ちゃんが来てたら、押し倒してた?」
「はあ……っ!?」
思わず、口に含んだ茶を吹き出しそうになる。
「その反応、図星?」
「ばっ、バカな事言うなよな!」
「だってー、今まで2人っきりだったんでしょ?何もしないなんて度胸ないなー」
「…するわけねぇだろ!ゲームしてただけだって!」
内心、疾しいところがあるため、孝太郎は目の淵に涙を溜め、咽ながら否定する。
「あっ!ねぇねぇ、私久しぶりに孝ちゃんの部屋見てみたいなー。2階のどこだっけ?」
口では同意を求めながらも、既に彼女は軽やかな足取りで階段へと向かっている。
「おい、待てって!」
慌てて、彼もその後を追う。これ以上、彼女にからかわれる要素を見つけられたのでは、たまったものではない。


―――その頃、同時刻。佐原家でも、椎奈と母が静かに夕食を取っていた。いつもは椎奈が話を盛り上げ、それに母と妹が笑顔で相槌を打つといった感じなのだが、今日はあまり話をする気が起きない。夕食を食べ終わった後、ぼーっとテレビを見ていても、何も頭に入ってこない。
母は壁の掛時計をちらりと見遣ると、
「もうだいぶ経つのに、杏子ちゃん遅いわねぇ」
「そうだね」
極力、声に感情を出さないように、椎奈は答える。
「……疲れてるから、もう部屋に戻るよ。おやすみ」
億劫そうに階段を昇り、2階の自室のベッドに倒れこむ。
一体、何を気にしているんだろう。自分が拒否したせいで、杏子が代わりに行ってくれているのに。何がこんなに自分の胸をざわつかせるんだろう。うっとうしい。むかむかする。
むしゃくしゃした気分が収まらないまま、彼の部屋に面している方のカーテンを何気なく引くと、とんでもない光景が椎奈の目に飛び込んできた。
杏子が壁際に追い詰められ、今にも孝太郎に襲い掛かられそうになっている―――実際は、彼の家のアルバムを勝手に見ようと逃げ回っている杏子を取り押さえようとしているだけだったのだが。
カーテンも引いておらず、お互い必死の攻防を繰り広げている2人は、椎奈にその様子を見られている事にも気付かない。椎奈の手がふるふると震え、顔が怒りで真っ赤に染まる。もう我慢が出来ず、
「……孝太郎ッ!杏子に変な事しやがったら、許さねーからな!!」
孝太郎と杏子は、突然耳に入った彼女の怒声に驚き、ぴたりと動きが止まる。閑静な住宅街の夜に、椎奈の大声が響き渡った。


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