投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

BLACK or WHITE?
【幼馴染 官能小説】

BLACK or WHITE?の最初へ BLACK or WHITE? 10 BLACK or WHITE? 12 BLACK or WHITE?の最後へ

−3−-3

「お姉ちゃん、もう大丈夫なの?」
「何がだよ?」
椎奈はソファに寝そべって、少年漫画誌に目を向けたまま、返事をする。あくまで隠し通すつもりなら、別に杏子も根掘り葉掘り聞き出すつもりはなかった。
「だって、昨日生理痛が酷かったって言うから…」
「あ、あぁ!もう全然平気だから!心配掛けてごめんな」
少し動揺した素振りを見せた後、満面の笑みで、椎奈は答える。
「そういえばね、この前偶然見掛けちゃったんだけど…」
椎奈からは決して見えないように、杏子は少し意地悪い表情をした後、
「孝ちゃん、誰か後輩の子に告白されてたみたい。無口で無愛想だから怖そうに思われがちだけど、あれで結構カッコイイから、私の学年でも人気あるんだよ」
ちらりと、彼女の反応を横目で窺う。勿論、こんな話大嘘。口からでまかせだ。姉が、どんな反応を見せるか。その結果によって、姉があの自分にとって目障りな男をどの程度意識しているのか測ろうとした。
「ふーん、良かったじゃん。確かに、あいつはいい奴だし、彼女の1人くらいできればもっと明るくなるかもな」
漫画誌から目を離さず、椎奈は極めて素っ気無く返事をする。
「お姉ちゃんは、好きな人いないの?」
「あははっ、んなもん、あたしにいるわけないだろ。杏子こそ、言い寄ってくるやついっぱいいるんじゃないのか?何か嫌な事でもされたら、すぐ言えよ」
「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」
(お姉ちゃんみたいに実力行使は無理だけど、それ以上の毒舌はあるから)
杏子は天使のような微笑を見せながら、心中ではそんな風に独りごちる。外見だけを見て、軽い気持ちで言い寄ってくるような男ならば、半泣きにさせるくらい罵倒した事もあるような彼女だ。
椎奈はいつも真っ直ぐな分、演技をしたりするのはあまり得意ではない。この様子だと、自分の気持ちを偽っているようには思えない。孝太郎の恋心などまだ姉には認識されていないようだ。杏子は、自身の経験からそう判断した。




翌日、椎奈が柔道部の練習に向かおうとしている途中、
(あ、あれは…)
校舎の奥の裏庭にいるのは、孝太郎と、知らない女の子。
ただならぬ様子に、彼女は思わず建物の陰に身を潜めて、こっそりと様子を窺う。彼も部活に行く途中らしく、既に柔道着に着替えていた。
もじもじと、顔を赤らめて俯いているあの子を見る限り、
(これは、どう見ても…告白シーンってやつ?)
杏子に話を聞いた昨日の今日で、こんな場面に遭遇してしまうとは…。
(もしかして、あいつってほんとにもてる…のか?)
様子が気になるが、ただでさえ普通の女子よりも体格の良い彼女なので、あまり身を乗り出すわけにもいかない。息を殺して、何とか漏れ聞こえる言葉の断片を掬い上げようとする。
「俺、好きな子いるから」
たどたどしくも懸命に自分の恋心を告白してきたその少女に対して、孝太郎はためらう素振りなど微塵も見せずに、すげなく断ってしまった。最後に一言、ごめんと告げると、たまらず啜り泣き出してしまった少女を残して、彼はその場を立ち去る。
(あーあ、泣いてんじゃん。冷てーヤツ。もうちょい言い方ってもんが……つか、好きな子って)
耳に飛び込んできたその言葉をしっかり再認識すると、鈍器で頭を思いっきり殴られたような感覚が、椎奈を襲う。指先に力が入らず、すぅっと体温が低くなっていく。この感覚は一体何なのだろう。
それに、おかしい。
彼にちゃんと好きな子がいるのなら、何故突然自分にキスなんてしたのか。そんな事は、その“好きな子”とやらにすればいいではないか。
そしてその後の、賭けにしては、性質が悪すぎるあの行為。やはり、彼は自分をからかって反応を面白がっていたのか?
それとも、その好きな子にそれを試す前に、自分を実験台にしたのでは…。気心の知れた幼馴染という、一番手近な自分は、その対象にするなら一番後腐れがない。
考え出すと、怒りが沸々と彼女の中に沸き立つ。ぐっと拳を握り締めて、思わず校舎の薄汚れた壁に八つ当たりしたくなる。
(…いい加減にしろよ、あのボケ!!)
幼馴染歴17年。
その長すぎる期間のせいか、彼女には、彼の好きな相手が、まさか自分だという選択肢が全く思い浮かばないのだった。


BLACK or WHITE?の最初へ BLACK or WHITE? 10 BLACK or WHITE? 12 BLACK or WHITE?の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前