投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

BLACK or WHITE?
【幼馴染 官能小説】

BLACK or WHITE?の最初へ BLACK or WHITE? 5 BLACK or WHITE? 7 BLACK or WHITE?の最後へ

−2−-2

放課後、部活に行くと、思った通り、みんなが気遣うような視線を椎奈に向けてくる。しかし、いつもと変わらず明るく振舞う彼女の姿を見て、段々と普段通り接してくれるようになった。
椎奈は心の奥底で、その事に安堵する。いつまでも済んだ出来事を引きずって醜態を晒すわけにはいかない。
道場の中を進んでいくと、壁に凭れて座っている孝太郎を見掛けたが、椎奈は声を掛けずに通り過ぎる。どうしても彼の前では平静でいられなかった。声を掛けたら最後、昨夜抱いた負の感情が吹き出してしまいそうで、目も合わせるのが怖かった。試合に負けたのは覆しようのない事実、自分の実力不足なのだから、彼を恨む筋合いなんてない。
幼い頃から何か勝負して彼に負ける度に落ち込んでいたが、今回は特にショックが大きい気がする。それに、最近練習試合でもずっと彼に負けっぱなしだ。
通り過ぎた彼の方をちらりと振り返ると、顧問の教師と話し込んでいた。
(……もしかして、もうこれから二度とあいつに…勝てない?)
ふと過った疑念に、どきん、と大きく心臓が鳴る。
項垂れて、道場の真ん中で立ち竦む。突然立ち止まってしまった彼女に、後輩が声を掛けてきたおかげで、はっ、と我に返った。早速弱気な自分が出てきたのを、頭の中から何とか追い出して、椎奈は練習に没頭するように努めた。


「椎奈」
部活中ずっと避け続けていたが、練習が終わって、部活生達が帰り始めた頃、いきなり孝太郎に声を掛けられて、椎奈はほんの少し動揺した。
「ん?何だよ」
声が上擦らないように注意しながら、椎奈はなるべく自然に振り返る。その動きに合わせて、後ろで緩く1つにくくっている短い髪の毛が跳ねた。
振り向いた先の、彼女の瞳に映った孝太郎の表情は思い詰めているように少し暗い。
「昨日の…賭けの話、覚えてるか?」
「あ、あぁ。覚えてるに決まってるだろ。何だ?何か奢れとか?あたし今そんな金持ってないから、あんま高いもんだと…」
「ちょっと…来いよ」
椎奈の言葉を遮り、孝太郎は低く呟いた。
そんな彼の様子に椎奈は違和感を抱きながらも、促されるままに辿り着いた、誰もいないクラブボックス。そこには椎奈と孝太郎の2人だけ。窓から差す淡い夕陽が、2人の姿を照らす。
「こんなとこで…何だよ」
「何でも従うって約束だよな?」
「……わかってるって!何でもやるから、さっさと言えよ!」
自分が、約束を違えるような人間だと思っているのかとでも言わんばかりに、彼を睨めつけて、口を尖らせながら、椎奈は答える。
「じゃあ、これからちょっと大人しくしてろ」
「は…?」
次の瞬間、孝太郎は再び椎奈の唇を奪う。
「!」
また、この感触だ。突然の行動に一瞬、思考が停止する。
すぐに正気に戻った椎奈は、必死に身を捩って抵抗しようとするが、両肩をしっかり抱かれていて振り解けない。唇を離した孝太郎が彼女の耳元に唇を寄せ、低い声で囁く。
「約束、破るのか?」
「…っ!」
根は真面目で正義感の強い彼女にとって、約束を破るという行為はとんでもなく卑怯で、許し難い事のように思われた。しかも、今回は正々堂々と勝負をした上での約束。その約束を果たさなければならない。
ぐっと、瞳に力を宿して、彼を睨みつける。決してただ言いなりになるわけではない。戸惑いを必死に押し殺し、ゆっくりと抵抗する力を抜いていく。
「…。」
抵抗をやめた彼女を、孝太郎は中央にある机の上に寝かせ、その小刻みに震える唇に、もう一度口付ける。
わけもわからず、虚ろに目を開いたまま、椎奈は彼の口付けを受ける。妙に生々しい粘着質な水音が耳に届くが、椎奈にはまるでそれが他人事のように感じられる。彼女の心を占めている大部分は、疑問であり、何故こんな事をされているのかわからなかったからだった。


BLACK or WHITE?の最初へ BLACK or WHITE? 5 BLACK or WHITE? 7 BLACK or WHITE?の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前