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BLACK or WHITE?
【幼馴染 官能小説】

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−1−-3

「お姉ちゃん、お姉ちゃーん?」
ぱたぱたと、軽やかに階段を昇ってくる足音が響く。
ドアが控えめに開けられると、ベッドの上で案の定すやすやと寝息を立てている姉の姿が、彼女の目に入る。
「お姉ちゃん!早く起きないと遅刻だよ!?」
彼女はゆさゆさと、姉の体を揺すると、椎奈はようやく目を開いた。
「んー…?」
目を擦りながら起き上がると、困ったような顔をしている少女の顔が間近にある。
「あんず…おはよー…」
そう言いながら、またふらりとベッドに倒れこんで眠りに就こうとする椎奈を何とか阻止すべく、健気な妹の杏子は、必死に彼女の体を先ほどより数段強く揺さぶる。
「もう、お姉ちゃんっ!今日、朝練あるんでしょっ!?」
その言葉を耳にすると、先程までの寝ぼけ眼は何処へやら、ばちっと彼女の両目が大きく見開かれた。
「そうだ!早く行かなきゃっ!!」
飛び起きるやいなや、杏子が見ているのも気にせず、パジャマを脱ぎ捨てて素早く制服に着替え始める。
「全く…」
そんな姉の様子に、杏子は苦笑いを浮かべる。
柔道一筋で、真っ直ぐで一生懸命。でも、そんな姉が大好きだったりするのだ。
「朝ご飯、もうできてるから、先に下行ってるね」
「わかった!」
杏子の姿が見えなくなった後、椎奈はぴたりと動きを止めて、軽く吐息を漏らした。
目の奥がずきずきと痛む。昨夜の孝太郎の不可解な行動のせいで、あまり良く眠れなかったのだ。おかげで、ようやく深い眠りに就いたのは、もう明け方近くだった。
寝不足で、少し頭がくらくらするが、今日は彼女にとってとても大切な日だ。気合を入れようと、ぱんっ、と一度両手で頬を叩く。
うっすらと、カーテンの隙間から光が差し込んでいる。今日は晴天らしく、幸先がいい。
うきうきとした気分で椎奈はカーテンを一気にひくと、正面の窓に、ちょうど着替え途中だった孝太郎の姿がある。
「…。」
彼も昨夜の失態の痛手を抱えて寝不足がちの上、朝っぱらから彼女と鉢合わせしてしまい、咄嗟に何も言葉を発する事ができない。
だが。
「あ、孝太郎おはよっ!お前も気合バッチリだな!」
さっぱりとした明るい笑顔で、椎奈は孝太郎に挨拶をする。
いつもとまるで変わらない彼女の態度。その朝日のように爽やかで眩しい笑顔は、ますます彼の傷口を抉るのだった。
「おう…おはよ……って、オイ」
孝太郎が少し緊張がちに挨拶を返そうとした時、椎奈はもう既にドアを開けて、部屋を出て行こうとしているところだった。茫然とした彼の瞳に、去ってゆく彼女の背中が無情に映る。
部屋がもぬけのからになった後、彼は深く肩を落とす。まさか、昨夜の出来事をここまで華麗にスルーされるとはさすがに思いも寄らなかった。脈なしどころか、眼中にすらないという事なのだろうか。
とりあえず、彼女の先程の様子を見ると、これからの関係がぎこちなくなるという事はなさそうだ。
彼女と離れたくない。せめて、彼女と何らかの繋がりを持っていたい。
一夜で、それもほんの数時間前に敗れてしまった自分の初恋。
眠れない頭で夜通し考え抜いた末、これからも一番の男友達として付き合っていこうと、心に誓ったのだった。
制服のネクタイを結びながら、遠い目で呟く。
「俺って一途……」




椎奈が慌ただしく階段を駆け下りてリビングへ向かうと、父はもう既に出勤した後のようで、母と妹の杏子が朝食を食べ掛けていた。
こうやって2人並んでいると、母と妹はとても似ている。
女性らしい柔らかさや、物腰の穏やかさが、外見の雰囲気からも伝わってくるかのようだった。
妹の杏子は、今高2の椎奈とは1歳違いの高校1年生。透き通るような白い肌に、ぱっちりとした大きな瞳。本当に、守ってあげたくなるような愛らしい美少女だ。どちらかというと、父似の椎奈とは似てもにつかない。後ろからその細い撫で肩を見ていると、何というかもう、骨格レベルで違う。
別に、椎奈自身は女らしさに執着があるわけではないので、その事を特に気にしてはいない。椎奈は少し体の弱い妹をとても大切にしていたし、杏子もいつも自分を守ってくれる溌剌とした姉に、憧れと絶対の信頼を寄せていた。互いにそれぞれ異なった魅力を持つ姉妹で、近所でも仲が良いと評判だった。
「…杏子、今日あたし朝練だから早く出るけど、1人で大丈夫か?」
心配そうに、椎奈は杏子の顔を覗きこむ。
椎奈が彼女の事に敏感になってしまうのも、高校入学当時に、彼女が通学途中の電車内で発作を起こし、倒れかけた事があったからだった。それ以来、極力杏子と一緒に登校するようにしている。
「私は大丈夫だよ」
椎奈を安心させるかのように、にっこりと杏子は微笑んでみせる。
「そっか…」
少し不安な気持ちは残りつつも、椎奈は穏やかな笑顔を見せた。妹以外の前ではあまり見せない顔だ。
「気をつけて行けよ」
「うん。お姉ちゃんも気をつけてね」
「…あたしの事心配してくれるのなんて杏子くらいだよ。じゃあ、行ってくるな」
何せ、痴漢を臆する事なく突き出してしまうような女だ。
ぽんぽんと、優しく彼女の頭を撫でて、椎奈は玄関へと向かった。


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