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BLACK or WHITE?
【幼馴染 官能小説】

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−1−-4

彼女らが通う公立高校は、電車で約20分と、まぁまぁ近い。まだ7時前、正門は閉められていたので、裏門に回る。それに、その方が柔道部の道場は近い。
「よぉーし、一番乗りっ!」
椎奈は明るく弾んだ声をあげながら、ガラガラと引き戸を引くと、
「ハイ、残念でしたー」
既に、柔道着に着替えて、道場の掃除をしていた孝太郎が声を掛ける。
「えーっ、もう来てたのか?」
本当は7時半集合なのだから、かなり早く来たつもりだったのに、先を越されてしまった。
椎奈は悔しそうに唇を尖らせるが、孝太郎はしれっとした態度でモップ掛けを続けている。
そんな彼の顔を見つめていると、ふと唇に目がいった。何故、昨日は突然あんな事を……。
(まさか……)
椎奈の中に、1つの心当たりが思い浮かぶ。
(あたしの不意をついて、やる気を挫こうって作戦か…?)
「…何だよ…」
何か探るような疑り深い視線を投げ掛ける椎奈だが、その視線を孝太郎は素直に受け止められない。彼女の顔を見つめていると、気を抜けば赤面しそうになってしまう。諦めると決めたはずなのに…そう思えば思うほど、彼女の柔らかい唇の感触が記憶の中から甦る。
「ん?いや、別に…あ、せっかくだし2人で先に柔軟でもやっとこうぜ!」
そんな彼の葛藤など知る由もない椎奈は、のん気にそんな提案をする。
「そうだな」
なるべく意識しないように、彼は背を向けて座った。
椎奈は彼の背後に回って膝立ちになり、彼の背を押す。
「相変わらず、体かったいなぁ…」
「ほっとけ」
ぶっきらぼうに答えつつも、背中を押す彼女の温かい手の感触が心地よい。
「んー、もう少し…」
椎奈はより体重を掛けて、彼の背中を押す。ぐいぐいと背中を押し続けられ、背骨が軋む音がするような気がする。
「…ちょっ、おい!痛てっ痛えって!!」
悲痛な声をあげながら、孝太郎は顔を歪めて振り向くが、椎奈はそんな事おかまいなしだ。むしろ、普段こんな顔を見せない彼の様子が面白くてたまらず、やめようだなんて思うわけがない。
「あはは、これぐらい平気だろ?あたしは絶対負けないからな!」
「気合だけは十分だな、お前…」
朝からもう既に疲れ気味の表情で、孝太郎は溜息を吐いた。
実は今日の夕方の部活で、3年生卒業後の次期部長を決めるための試合がある。部員全員の投票で次期部長を決めるはずだったのだが、何と椎奈と孝太郎は同数。そのため、潔く試合で白黒つけようという事に決まったのだった。
単純に考えれば、女の椎奈の方が不利だろうと周囲は感じていたが、彼女の柔道に対するひたむきさをわかっていたので、敢えてこういう決定法を採用したのだった。その方が、清廉潔白を好む彼女も、どういう結果になろうが、実力なのだからと納得するだろう。
「そういやさぁ、お前昨日のアレ、あたしを動揺させる作戦か何かか?残念ながら、そんな浅はかな手に引っ掛からないからな」
椎奈の何気ない言葉に、孝太郎の頭の芯が冷える。背中から伝わる彼女の熱も感じなくなりそうな程、心の奥が静まる。
(作戦……?馬鹿言うな)
確かに、冗談を装っているように見せかけていたのは否めないが、昨夜の一件をそんな風に捉えられていたとは思いも寄らなかった。
「どーした?」
急に押し黙ってしまった孝太郎に気付かず、椎奈は気楽に声を掛ける。それがまた、彼の神経を逆撫でさせる。
彼の中では、一世一代の大博打、それ位の勝負だった。冷えた思考のまま、こんな台詞を口走っていた。
「…椎奈、俺とさ、賭けようぜ。今日の試合、どっちが勝つか」
孝太郎はあくまで平静を装って、こんな賭けを持ち出した。
「ん?あぁ、いいよ。勿論、あたしはあたしに賭ける」
こんなやり取りは、2人が子どもの頃から何度もしていた事だ。特に疑問も抱かず、椎奈は安請け合いする。
「俺もだ。じゃあ、負けた方は、勝った方に何でも従う」
「よっし、のった!」
そこまで決めたところで、ようやく他の部員達も集まり始める。
「おっす、2人共早ぇなー」
「あ、先輩。おはようございまーす!」
立ち上がって明るく挨拶をする椎奈を、孝太郎は相変わらず静かに見つめていた。先程の彼の剣呑な眼差しに、鈍感な彼女は到底気付くはずもなく、試合の時間は刻一刻と迫っていた。


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