告白-2
薄暗い雲空、容赦無く地面を叩きつける雨音
俺は、鞄で雨を防ぎ自宅まで走って居た。
水溜りを踏み、ズボンは濡れ、辺りは皆当然の如く傘を指し。
体も冷えて来る。
「はぁ…」
冷雨に体を打たれ、息もそろそろ切れ始め、俺は何だかどうでも良くなって行き
歩く速度を一気に下げ…、とぼとぼ歩いていると。
「!」
急に、それまで打たれ慣れた雨が、ピタッと無くなり地面に何やら丸い影が見え
何より人の気配がし、振り向く。
「…樹里奈。」
ソコに、笑みは一切無いものの、悪意を感じない柔らかい表情をした俺の想い人の姿が
映っていた。
それから何分が経ったろうか、大好きな人が傍に居るのに、何か大きな異物が混入して
居る様な、複雑な状況で、先ほどからお互い何も口を出す事は無く、彼女の傘に入れて
貰っている俺は、時より彼女に視線を送る。
「…傘は、どうしたの?」
ようやく彼女が口にした言葉、俺は玄関で傘が無くて困ってるクラスの人に貸してあげた
事を告げると。
「貴方、何時傘の貸し屋サンになったのよ」
そう言葉を発する彼女の表情は、何処か穏やかで
心の中でひっそりと言って居るのだろう「相変わらずね…」って。
道中、弱りかけの一輪に咲く花を目にした、その花は容赦無い雨に打たれ、今にも
倒れそうであり。
「どうしたの?」
俺が、その花に近づき、彼女もそれに釣られ、俺らが雨に濡れない様、丁寧に移動し
その雨がさっきまでの俺の様になり、その花に視線を降ろし。
「酷い雨だから、仕方が無いよね」
そう、花に同情を掛け、俺はその花に
「あ…」
美術で余った小さいダンボールを器用に折りたたみ、そのまま弱りかけた花に、もう濡れ
無い様上手くかぶせ。
今日の美術の時間に、友達の一人がふざけて俺の鞄に投げ入れたのを思い出し行動に出た
次第で。
その作業をする俺の背中に、何やら暖かい視線を感じ。
彼女との刻(とき)は、見慣れた分かれ道と共に、序所に失っていき
「それじゃーしゅう、家に帰ったらちゃんとお風呂に入るのよ」
胸に響き、冷え切った体に、暖かくて厚い毛布で、包まれる様な感じ
俺は、彼女のその慈悲深い言葉を、聞き漏らす事無く、大事に脳裏に刻み。
「おっ…」
突如目の近くに、彼女のテキパキとした手が見え、雨で濡れた俺の顔を拭く。
「もう駄目だよ、無理しちゃ…」
胸が焼ける
「じゃ、私はこれで…、気をつけてね」
ドクッ
あぁ、もう駄目だ
!!?
俺の胸が、彼女の細い背中に触れる
冷たい雨が、容赦無く俺らの体を打とうとも構わず
急に抱きしめた衝動で、持ってた傘が手から放され
濡れてない彼女の胴体に両手が触れ。
「嫌だ!行かないでくれっ!」
俺は想いを放つ、こんな酷い状況で、俺から離れようと抵抗もせず、固まる彼女
ダガ同時に言葉も何一つあげない…
「俺を…こんな俺を救ってくれて…ありがとう!、君が居なかったら今こうして皆と
楽しく話したり笑ったり何かいなかったっ!、君が俺に再び行動をする権利を、笑う権利
を…、人として生きる権利をくれたっ!…」
「俺、俺…、駄目何だ…弱虫だから、女神の様に優しくて常に見守ってくれる、そんな人
がぁ!…だから、だから」
ずっと、ずーーっと…弱虫な、俺の…この手を…握っていて下さいっ!
雨の音色だけが耳に響き、静寂な刻を刻む
「……んね」
「え?」
「私こそ…本当に御免なさい…こんな、こんなぁっ!」
「あっ、待って行かないでぇー」
何か重い物を、振り切る様にこの場を去る。
「樹里奈っ樹里奈っ…」
蓮見樹里奈ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!