くのいちさんが狂いました-6
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「………………と、いうのがここに来るまでの経緯です」
「あぁ……それは、たまたま不幸が重なってしまっただけなのでは、ないでしょうか……?」
止まることの無い涙を布で拭き続ける看護師と、どうしたらいいのか分からず困惑するばかりのお医者さん。彼らは今で言う外科医であり、所謂精神面(メンタル)の治療は専門外でした。もっとも、戦国時代にその方面の医学があったかどうかは定かではありませんが……
「きぃぃぃぇええぇええええぇぇっっ!!」
離れた場所に座り込んでいたくのいちが突然唸り声を上げ、持っていた手裏剣をお医者さんに向かって投げ付けました。
「男(オトコ)なんてぇぇぇぇえっっ!! 男(オトコ)なんてぇぇぇぇえっっ!! 男(オトコ)の癖に、男(オトコ)がそんなに好きかぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっっ!!」
「こ、断っておきますが、私にそんな趣味はありませんから安心してくださいぃっ!!」
これはあくまでただのお話です。しかし、もしかしたら、戦国時代にもこうやって発狂してしまったくのいちがいたのかもしれません。
いた、という記録は当然残っていないでしょうけれど、しかしいなかったという証拠もありません。すべてはまだ、分からないのです。
〜おしまい〜