千年メダル-29
そんなあたしの呟きが聞こえなかったのか、久留米さんはさらに続けた。
「俺が高校受験の勉強してる真っ最中でもさ、バカでけえ音で下手くそなギターかき鳴らしてるんだよ。
迷惑ったらなかったね、おかげで俺まで歌覚えちまったんだ。
そん中でも、俺、この歌が一番好きでさ。
ちょっと懐かしくなったから聴いてていい?」
そう言って、久留米さんは少しボリュームを上げた。
ハミングが終わって、男性ボーカルの声がカーステレオから飛び込んできた。
――永遠に君を愛せなくてもいいか
十字架の前で誓わなくてもいいか
守れそうな約束と 気のきいた名ゼリフを
今 考えてるところ
何となく可愛らしい歌詞にクスリと笑いが込み上げてきた。
「久留米さんって結構ベタなラブソング好きなんですね」
「……うるさい」
むくれてそっぽを向いた彼の耳は真っ赤に染まっていた。
それでも構わず音楽はどんどん流れていった。