千年メダル-27
それから、あたし達はどちらからともなく手を繋いで車に戻った。
秋になったとは言え、強い日差しで車の中はムッとした空気で覆われていた。
静まり返った車内は、なんとなく照れ臭くて、妙にあたしをソワソワさせる。
それは彼も同じだったのか、そそくさと車のキーを回してエンジンをかけた。
エアコンが一気に稼働し、熱い空気をかき混ぜ始める。
「なんか、ラジオでもつけるか」
車内が涼しくなるまでの間、彼はそう言ってオーディオのスイッチを入れた。
『へー、そうなんですねえ。
でも、新しい恋に巡り合えて、お友達もよかったですね!』
突然飛び込んできた、澄んだ女性の声。
話の前後はわからないけれど、リスナーのお便りに対しての感想を述べているらしい。
ディスクジョッキーの女性は透明な声を発しながらなおもしゃべり続けた。
『では、友人の恋を応援しているという、ラジオネーム“セイくん”さんからのリクエストいきましょうか!
THE HIGH-LOWSで“千年メダル”です』
女性がそう言うと、今まで絞っていた曲のイントロが徐々にボリュームアップしてきた。