千年メダル-16
「……ソイツが飼ってる猫が、俺ん家の近くのコンビニに迷い込んでいたんだ。
何でこんなとこにコイツがいるんだって不思議に思っていたんだけど、それを除けばいつもと変わらない様子で、俺の足元にすりよってくるだけでさ。
だから、そん時は単に家から逃げ出しただけって思ってた。
でも、宗川さんと関わらなくなった今、このタイミングでこんな離れた場所でソイツが現れるなんて、何か意味のあることだったように思えてきて……。
今思えばその猫は、……俺が勇気を出せるように、きっかけを与えてくれた、そんな気がするんだ」
「……うん」
しゃくりあげながら、あたしはあの子の薄汚れた毛並みを思い出す。
塁に流されそうになっていたあたしの目を覚まさせてくれたメイは、久留米さんにも何かを伝えたくてあれだけの距離を走り続けていた、そうとしか思えないよ。
……メイ。
あたしはあの子の丸い瞳を思い出しながら、心の中で何度もお礼を言った。
「その猫を送り届けることで、もう一度ソイツと話ができるようになったんだ。
でも、俺はまだずっと芽衣子と茂のことが引っ掛かってた。
アイツらを追い詰めた罪は、一生かけて償うつもりで今まで生きてきたんだからな。
だから、ソイツとまた話せるようになった、それだけで十分だって、自分に言い聞かせてたんだけど……」
久留米さんはそう言うと、ジーンズのポケットから何やら一枚の紙を出してあたしに差し出してきた。