千年メダル-12
「なんかその女と一緒にいると、茂とバカやって、横で芽衣子が笑ってくれたあの時みたいに笑えるようになってさ。
下らない話を一生懸命話す姿が可愛くて、かと思えば前に付き合っていた男のことで泣いてばかりでめんどくさくて……。
そういう世話のやける所がどっかの誰かに似てんなあって、懐かしい気持ちにさせてくれたんだ」
「……っく」
静かに語る久留米さんの言葉に、涙が溢れて止まらない。
気付けばあたしはその場にしゃがみ込んで、膝に顔をうずめていた。
「でも、そんな懐かしくて温かい気持ちになればなるほど、俺は自分が怖くなってった。
アイツらを不幸にさせるくらい芽衣子のことを諦められなかったくせに、手のひら返したみたいにその女の存在がどんどん大きくなっていく自分が許せなかった。
俺は他の女を好きになって、幸せになっていい人間じゃないんだから。
だから、ソイツが俺の心の中にこれ以上入って来ないよう自分なりに距離を置いて接してきたつもりだったんだ」
久留米さんが決して踏み込ませてくれなかったテリトリー。
それは、茂さんを、そして芽衣子さんを想うあまりに自分に与えた罰だったんだろう。
涙で膝の辺りが冷たくシミを作る。
やっぱりあたしはどんなに頑張っても芽衣子さんの存在には勝てないんだ。
埋めた顔を醜く歪めるあたしに向かって、彼はさらに続けた。