投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

forget-me-not
【女性向け 官能小説】

forget-me-notの最初へ forget-me-not 79 forget-me-not 81 forget-me-notの最後へ

言えなかった「好き」-4

片膝を立てて座り込んでる陽介の隣に、意を決して腰掛ける。


陽介の顔が近くなって、さらに心拍数が上がる。


何度も身体を重ねてきたくせに、「好き」って言葉がなかなか言い出せない。


それほどあたしにとって、その言葉はあたしの想い全てが込められているわけで、陽介があたしに軽々しく言う「好き」とは重みが違うのだ。


そんなあたしの胸の内なんて知らない彼は、ぼんやり煙草の煙を吐き出すだけ。


何も話さない二人だけの空間で、バスルームでお湯をためている音だけがやけに大きく聞こえた。


どれぐらい時間が経ったのか、煙草を吸い終えた陽介は、吸殻いっぱいの灰皿に煙草を押し当てて火を消すと、あたしを見ないまま、


「……さっきは悪かったな」


と、呟いた。


目を丸くして彼を見ると、バツが悪そうに耳の後ろをガシガシ掻く姿。


そして、ゆっくりこちらを向いては口を開く。


「どこか痛むとこはないか?」


「……ううん、大丈夫」


優しくされると目の奥がツーンと痛んで涙が出そうになるあたしは、まるでパブロフの犬みたい。


同時に、さっきの八つ当たりした自分がとてつもなく恥ずかしくなって、あたしは俯いたままボソッと呟いた。


「あの、あたしこそごめんね。勝手なこと言っちゃって」


「いーよ、別に。ホントのことだし」


あっけらかんとした口調に驚いて顔をあげれば、陽介は頭の後ろで手を組んでいるのが見えた。


そして相変わらずのバツの悪そうな苦笑いのまま、ペロッと舌を出す。


「お前の言う通りなんだよ。カノジョがいても散々女遊びしてた俺が、真面目な女と付き合ったってうまくいくわけねえんだよな。メグにとってはそういうとこも不満だったんだろ」


「陽介……」


「そこでさらに価値観まで違えば、理解もしづらいもんな。確かに別の世界の人間なのかも、俺とメグは」


「…………」


「……すげえ大事にしてたんだけどな」


寂しそうに笑う陽介に、罪悪感で胸がチクンと痛む。


これが仕掛けた罠の代償なのかな。


そっと陽介の手をとったあたしは、自分の頬にそれをそっとあてた。






forget-me-notの最初へ forget-me-not 79 forget-me-not 81 forget-me-notの最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前