メイ-15
「……メイ!!」
キョトンとこちらをあどけない顔で見上げた白い猫は、まさにあたしが数時間必死に探し求めた愛猫の姿と一致した。
久留米さんの姿を見てボロ泣きしたくせに、さらに涙がブワッと溢れ出す。
涙って枯れ果てることはないんだろうか、滂沱のごとく落ちる涙を止められないままに、その小さな白い身体を持ち上げると胸にギュッと抱き締めた。
「バカ……! 散々心配かけさせてどこにいってたのよお……!」
彼女の身体に顔を埋めると、砂混じりのざらついた感触があたしの頬に伝わってくる。
よく見れば、メイの身体は所々泥や枯れ葉のクズが毛に張り付いていた。
こんなに汚れてまで、この子はどこに向かおうとしていたんだろう?
泣きじゃくるあたしを尻目に、メイは呑気にゴロゴロ喉を鳴らすだけ。
「よかったあ……」
でもそんな疑問より、安堵の気持ちが勝ってしまい、しばらくの間、あたしはメイを抱き締めながらシクシク泣いていた。
車内に響くあたしのすすり泣く声が治まって来た頃、久留米さんが運転席からこちらを振り返ってあたしに言った。
「前に宗川さんと偶然会ったコンビニ覚えてる?
コイツ、そこの駐車場にいたんだ」
「え?」
「たまたま煙草切らしてしまってさ、そのコンビニに行ったんだ。
んで、買い物済ませて車に乗ろうとしたら、やけにニャーニャー鳴き声がするんだよ。
何だろうってキョロキョロしてたらコイツが駆け寄ってきたんだ」
そう言って、彼はあたしからメイに視線を移した。
彼の言葉に驚いて、あたしも顔を離してメイを見たけど、彼女は他人事のようにあたしの膝の上で丸くなりだしただけだった。