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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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メイ-14




数十メートル先にあった車にたどり着いたら、久留米さんは助手席ではなく後部座席のドアを開け、あたしに乗るよう促した。


車に乗ったが最後、家に強制送還させられてしまうことが目に見えてわかっていたけど、ここで逆らっても時間をロスしてしまうだけだ。


家に着いたらもう一度外に出ればいい、そのつもりで一旦は彼の言う通りにすることにした。


車の中は暖房が効いていたので、冷えきった身体が暖気に包まれた瞬間にブルッと身震いした。


車内灯のオレンジの光に目を細めつつ真ん中のシートにゆっくり腰掛ける。


長時間走り続けていた身体は、シートに座った途端に足の裏やふくらはぎがジンジン痛み出した。


ジワジワ染み込んでくる痛みと、暫しの休息に自然と目が閉じられる。


こんなゆっくりしてる場合じゃないんだけど、一旦休んでしまうと身体が石みたいに動けなくなってきた。





その時、あたしの足をスルリと何かが横切ったような感触があった。


「……ん?」


ゆっくりと目を開いて足元を見れば、フワフワの白い毛玉がモゾ、と動いた。


久留米さんも運転席に乗ったから、ドアが全て閉められた車の中は車内灯が消えてしまいほとんど真っ暗だ。


無音のままのオーディオの明かりだけがささやかに光っている状態。


あたしはそのわずかな明かりを頼りに、さっきの感触があった足元の辺りを目を凝らして見つめた。


その白い物体はクルリとあたしの足元で身体を反転させてから上を見上げる。


そして、それとあたしの目がバチッとあった時、あたしの目は見る見るうちに驚きで極限まで開かれていった。





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