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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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メイ-12

「宗川さん、大丈夫?」


そう言って久留米さんはあたしの背中にそっと腕を回してトントンと優しく叩いてくれた。


お風呂上がりだったんだろう、洗いざらしのシャンプーの香り、柑橘系のボディーソープの香り、そしてあたしの記憶に深く染み込んでしまった彼の煙草の匂いが広がった。


なんで彼がここに 現れたのか、そんな疑問は一瞬浮かんだだけで、すぐに遠くに飛んで行った。


彼があたしの名前を呼んで、抱き締めてくれたこの状況が、“考えるのを止めろ”と言っていたからだ。


できるなら、このまま時が止まって欲しい……。


それほどに彼の腕の中は心地がよかった。





でも、そんな悠長なことを言ってられる状況ではない。


彼の温もりを名残惜しみつつも、あたしは久留米さんの胸からそっと顔を離すと、小さくしゃくりあげながら、


「久留米さん、メイがいなくなっちゃった……」


と言った。


「……うん」


「ずっと探し回っているのに、全然見つけられなくて……」


「……うん」


一生懸命伝えているのに、久留米さんは小さく頷くだけ。


言葉にすると、今の状況がたまらなく不安になってきて、あたしは再び込み上げてくる涙をそのままに叫んだ。


「メイに何かあったらあたし……!!」


うわあっと激しく嗚咽を漏らすと、彼はそっとあたしの頭を撫でた。


いくら久留米さんがいても、この状況は変わらないのだ。


現実に絶望しながら、両手で顔を覆って激しく泣きじゃくるあたし。


それをジッと見つめていた久留米さんは、撫でていた右手であたしの二の腕をガシッと掴むと、


「とにかく車乗って」


とだけ言い、フラフラのあたしを立ち上がらせた。





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