それだけでよかった-6
「……クソッ」
吐き捨てるように舌打ちをした陽介は、次の瞬間あたしの身体を床に押さえ付けて、悔しそうに奥歯を噛んでいた。
苦々しい顔をしたから、てっきりあたしを拒むと思っていた陽介は、そのままあたしに覆い被さって一気にキスをしてきた。
「……っ!」
目を見開けば、陽介の伏せたまつ毛がすぐそこにある。
そして触れ合った唇から、まるで電流が流れたみたいに疼くような快感が全身に広がった。
ゾワリと粟立つ背中。ジュワ、と溢れるような感覚がした脚の間。そして、目から溢れ出した涙。
陽介に触れられてると認識した身体は、すぐに反応していた。
陽介が、あたしを求めてくれた。
それだけで勝手に流れてきた涙は、抑えることができなくなるほど。
もう頭の中を陽介を求めることしか考えられなくなっていた。
「んっ……」
舌の付け根をなぞられたり、互いの舌を絡ませては軽く吸ったり。
固いフローリングの上で、あたしは陽介の髪を乱しながら、無我夢中で彼のキスを貪っていた。
しっかり抱き締められるとあの頃の快感が勝手に甦って、下着が冷たくなっていくのがわかる。
陽介の手があたしの身体に伸びてくると、たまらずにあたしは高い声をあげた。
「ああっ……」
セックスはご無沙汰ってわけじゃない。
ついこないだ、ナンパ野郎のススムとシたり(未遂に終わったけど)、あたしに言い寄る男とシたり、陽介がいなくてもそれなりに相手はいた。
だけど、陽介に触れられただけで身体中が歓喜の悲鳴をあげているのがわかる。
キスだけで、子宮が疼いたような気がして、胸がキュンとしめつけられる。
好きな男に触れられるのがこんなにも気持ちいいなんて。
「陽介……陽……介……っ!」
名前を呼ぶ度に、抑えていた想いが溢れそうになる。
あたしはやっぱり、陽介が好き。