それだけでよかった-5
「女の子とちょっと話しただけで、嫉妬でその娘を責めるメグを見た時に、俺が信用されていないから、ここまで追い詰めてしまったんだなって……」
「……陽介が悪いわけじゃないよ」
気付くとあたしは、陽介の背中に腕をまわしていた。
スグルと別れて、陽介と関係を持ったあの時と同じ、ゴツゴツした背中に胸の鼓動が早く脈を打つ。
……もう一度、あの時に戻ろうよ。
「……陽介と恵ちゃんは、元々別の世界の人だったんだよ。ただそれだけ」
「くるみ……」
今になって思う。スグルに浮気された時は、怒りでスグルだけを悪者にしてたけど、結局価値観の違いが根本的にあったから、あたし達は終わったのだと。
だから、陽介と恵ちゃんもそう。遊び人と真面目な女の子なんて、元々別の世界の人間だから、同じ場所にいれるわけなんてないんだ。
陽介をわかってあげられるのは、あたしだけ。
「陽介、また前みたいに癒してあげようか」
あたしはそう言うと、陽介のタンクトップの裾から腕を入れて、お腹の辺りをそっと撫でた。
「……ダメだ、くるみ」
「どうして? 恵ちゃんとは別れたんでしょ? 遠慮することないのに。どうせ陽介はどんな女の子と付き合ったって長続きしないんだもん。女の子に本気にならない陽介が、真面目な付き合いする方が無理なのよ」
後ろから覗き込むようにして、陽介の顔を近くで見れば、胸がドキッと高鳴り、劣情を駆り立てられる。
散々抱き合ってきた身体がズクンと疼いたあたしは、そのまま陽介を押し倒した。
「やめろ、くるみ……」
「いいじゃん、前みたいに戻ろうよ。あたしなら、陽介のすることに口出ししないし、陽介が面倒くさがることは望まないし、きっと陽介にとって一番合うと思うんだよね」
そう言って陽介にキスをしてから、唇を少しずつ首筋に動かして、くすぐるように口付けた。
陽介をその気にさせるつもりであたしはまた、罠を仕掛ける。
身体さえ繋ぎ止められたら、あたしは再び陽介の隣にいられるはずだから。