それだけでよかった-2
と、いうのも、陽介は他の女と遊んでも付き合っても、結局長続きしないであたしの所に帰ってくると知ったから。
――カノジョにはない気楽さと、くるみの身体がいいからなかなか離れらんねえんだよな。
いつものようにベッドに座って、煙草を吸いながら悪びれずに笑う陽介の顔が今でもすぐに思い出される。
いかにあたしがどうでもいい存在だってのがよくわかる。
カノジョほど尽くさなくてもいいし、遊ぶだけの女ほど機嫌を取らなくてもセックスできるから。
そんな都合のいい女をやってくれるのはあたしだけだから、陽介はあたしの所に戻るんだ。
虚しい気持ちはもちろんあるけど、帰る所があたしの所だっていう事実は、妙な自信を与えてくれる。
誰と付き合っても、誰と遊んでも、陽介についていけるのはあたしだけ。
だから、今回も同じでしょ?
そう問いかけながら、あたしは陽介の部屋の前に辿り着くと、インターホンを鳴らした。
「……くるみ」
しばらくして、陽介がボサボサな髪をボリボリ掻きながら、ドアを少しだけ開ける。
ちょっとやつれたように見えるのは、やっぱり「あの娘」が原因なのだろう。
罠を仕掛けたのはあたし。
静かな水面に石を投げたみたいに、波紋が広がっていく。
今は辛いかもしれないけど、あたしの所に戻ってくれるなら、目一杯尽くして、恵ちゃんのことを忘れさせてあげるから。
「久しぶりだね、陽介」
ニッコリ笑うと、陽介は無表情のままあたしの顔をボンヤリ眺めていた。