〈哀肉獣・喜多川景子〉-18
『あら、貴女の搾り汁が目減りしていくわね?何処に流れていってるのかしら?』
弄ばれるという言葉では表現しきれない変態行為を、景子は止められない。
睨む・怒鳴るという抗いは一向に効果を見せず、その虚しさだけが心を埋めていってしまう。
(もうやめろよ!!やめてくれよぉッ!!)
あの日の麻里子と同様に、船旅の最中に肛門からの排泄だけは耐えていた。
真っ当な人間ならば、人前での排泄は恥辱の極みなのは疑いようがないし、それが強制的な排泄なら尚更の事。
船の中では質素な食事しか与えられてはいなかったが、数日間分の排泄物は確実に溜まっているのは事実であったし、そこに自身の小便が流し込まれたのだから堪ったものではない。
嫌悪感に満ちた腹部の膨満感に精神は悲鳴をあげ、襲ってきた腹痛に顔はグニャリと歪んだ。
『自分の小便をお尻の中に仕舞っちゃったの?そんなに大事な物なんだ?』
徹底的に貶めてくるタムルをギロリと睨む……しかし、玩具と金属の下着の生み出す快感と、浣腸による腹痛と嫌悪感に崩れた顔には曾ての威圧感はもはや無かった……それは犯罪者と対峙した刑事の顔ではなく、苛められっ子が泣いて歯を食い縛っている様と同じだ……。
『……貴女の大事な物って所詮はこんな下らない物なのよね?妹の美穂さんも小便程度の〈大事な物〉なのよね?』
「!!!!」
またもタムルは景子の傷口に触れ、ケラケラと笑ってみせた。
この新しい牝を家畜として飼う為には、自分を主人として認めさせ、生意気な性格を改めさせなければならない。
その牝に人間的な感情があり、家畜となる為の障害があるなら、それは破壊してしまわなければ……。
「こ、このぉッ!!まだ美穂の事を言うつもりかあ!!!」
快感と激痛に悶えながらも、景子は必死にタムルに噛み付かんばかりに吠え、消えそうな怒りの炎を立ち上らせた。
その反応が、その生意気な態度こそが、タムルの異常性を高ぶらせるのだと景子は気付かない。
妹の美穂が自分の“弱点”だと、まだ気付かない。
麻里子が、瑠璃子や春奈の事で為すがままにされたのと同じく、そして架純が大翔の事を執拗に聞かされたのと同じく、この弱点をタムルが突かないはずがなかったのだ……。