〈哀肉獣・喜多川景子〉-10
『……なんてプライドが高いのかしら?ますます好きになったわ』
「やめッ!?……あぁッ…!!!」
タムルの握り拳の中で、ブチンと破壊音が鈍く響いた……その拳が解かれると、胸の防着は肌から離れた……。
「い…嫌ッ……嫌あぁッ!!!」
肩紐を失ったカップは胸肉を見放してしまい、ポッカリと隙間を開けたまま胸元に止まっているだけに過ぎない。
景子の胸肉は少女のように小さく、真っ平らな胸板に丸い半円の肉球が張り付いているよう。
それは発育が始まったばかりの少女の胸のようで、乳首と乳輪を僅かな胸肉で尖り出させたようなもの。
そんな小学生の時から発育が止まったような胸肉では、どんなにブラジャーのカップにパッドを入れようが胸の谷間など望みようの無い代物だ。
しかし、やはり成熟した牝だから乳首や乳輪は大きく、小麦色の乳輪には、麻里子や文乃よりも大きな突起物が並び、完熟した肉体だと見る者に訴えていた。
『貴女の“先っちょ”見えちゃってるわよ?子供みたいな胸に、大きな乳首がポコンって……』
ヘラヘラと笑いながら、タムルは景子の肉体的欠点を論(あげつら)った。
文句のつけようの無い美顔や肢体を誇りながら、その一方ではまな板のような胸の膨らみしか備えていない。
大人の女性には必要不可欠なブラジャーすら、存在意義を疑うしかない景子のコンプレックスを、タムルが狙わぬはずは無かった。
『こんな胸、どうやって揉めばいいのかしらね?』
「う、煩いんだよッ!!んうぅッ…!!」
タムルの指先がブラジャーのカップに滑り込むと、景子は唸り声と共に上体を捩らせ、接触を許すまいとした。
あの日、八代に触れられて望まぬ媚態を曝してしまった恥辱を、再び披露する訳にはいかない。
麻里子や瑠璃子を人間として扱わず、妹までも慰み者にしてしまうかもしれない“コイツ”にだけは、二度と《女》を見せまいと抗っていた。
「ぐぐ…ッ…それ以上、汚い手で触るんじゃねえ……」
卑劣な指先は微小な胸の膨らみをなぞり、焦らしながらも乳輪にまで到達した。
食い止められない接触……唇をブルブルと震わせて横目に睨む景子の目は、悔しさと怒りに充血して赤くなっていった。
時折、鼻の下を伸ばしたタムルと視線が重なるが、その憤怒の形相にすら鬼畜は怯む様子は無い。
むしろ、その様が面白くて堪らないといった様子だ。