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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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大好きだった人-11

「そうだっけ?」


「そうだよ。

お前、気にもならなくなっちまったのな。

それに、ライターだっていつの間にかホテルのじゃなくて普通のヤツ使ってるし」


塁はフッと小さく笑ってあたしが煙草に火を点けるのを見つめてから、入れ替わるように煙草の火を消した。


あたしは、塁がそこまで見ていたことに内心驚く。


あたしがラブホのライターを使っていたのは、そこで塁と抱き合った確かな証拠を自分の中に刻みつけたかった所があったからかもしれない。


思い出の品、にしては少々陳腐で人に見せられるようなものではなかったけれど、あの頃の自分にとっては、塁と過ごした記念品のようなものだった。


塁は、ドッカリと木製の椅子の背もたれに勢いよくその身を預けてから、やけに真顔であたしを見た。


「……お前、もしかして男でもできた?」


塁の言葉にギョッとして、ただ視線だけを上げる。


「え、な、何言ってんの? できるわけないじゃん」


「だって、連絡ねえし、今日だって“生理だ”って断られるし……」


「だって生理は仕方ないでしょ。

それに“そのお誘いじゃない”って言ったのは塁の方じゃん」


そう言ってあたしはごまかすように、まだまだ吸える煙草を灰皿に押し当てた。


「まあ、そう言ったのはオレだけど……」


どこか茶を濁したような言い方をしながら、彼は首の後ろをポリポリ掻き毟った。


「今日、ホントはさ、オレのアパートにお前のこと呼ぶつもりだったんだ」


「何で?」


どこか言いづらそうに顔をしかめていた彼は、なぜか一つ小さく肯いてから


「付き合ってた時みたいに戻りたくなったから」


と、ポツリと言った。







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