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もう君に会えない
【大人 恋愛小説】

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大好きだった人-10

「っつーかさ、こないだ会ったのだって、かなり間が開いてただろ?」


煙草の紫煙が再びあたしの鼻腔をくすぐる。


ほんのり甘い香りの混じるそれは、すっかり懐かしいものとなっていた。


代わりに馴染み深い香りになったのは、鼻がスースーするあたしのメンソールの煙草と、あの人が吸っていた赤いマルボロの少し苦い香り。


こんな煙草の煙一つで、またしてもあの人のことをすぐに連想してしまうなんて。


諦めの悪い自分に苦笑いを浮かべるしかない。


塁の言う“かなりの間”があること自体、あたしにとって信じられない出来事だったのだ。


今までなら、2週間もすればしびれを切らして会いたくなって、自分から連絡をとっていたあたしが、全く音沙汰無しでいられたんだから。


塁が知らない娘と一緒にいる所を見て、ショックを受けていたあの頃すら懐かしく思えた。


あの時は悲しくて悔しくて仕方なかったけれど、あれがなかったら久留米さんと一緒に飲みに行くことなんてなかったはずだし、ドンドン彼に惹かれていくこともなかったかもしれない。


そう考えると、物事って不思議な巡り合わせみたいなものがあるのかなという気にさせられてくる。


そんなことを思いながら、あたしも煙草をボックスから取り出すと、自分のライターで火を点け、口を開いた。





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